※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。
ダンジョン飯の考察として、ひとつ変わった資料から始めます。2016年、3巻の広告ポスターのために、作中の料理「大サソリと歩き茸の水炊き」が実際に食品サンプルとして作られました。存在しない食材をどう立体化したのか。答えは——大サソリの身は伊勢海老、歩き茸はエリンギ、干しスライムはマロニー。作った職人はこう言っています。「架空の料理なのでこっちが表現してしまえば、もうそれが答えなのかなと」。この作品がやっていることと、まったく同じでした。
📘 この記事でわかること
- 架空の魔物料理が、現実の何を型にして作られたか
- 職人が「いちばん難しかった」と語った食材
- 担当編集が制作会社に最初にかけた言葉
- 食品サンプルが日本独特の文化である理由
- 原作が全14巻・9年半で完結していること
- アニメ第2期の放送時期とスタッフ・キャスト
📈 数字で見るダンジョン飯
架空の魔物料理は、現実の何でできているのか
🔑 食品サンプルに使われた型
- 歩き茸=エリンギ。職人の説明は明快でした。「型を取れる大きさのキノコってエリンギしかないんですよね」。
- 大サソリ=伊勢海老(身)+海老や蟹(殻)。「身は伊勢海老を利用しました。殻の部分は海老や蟹を使って、少し盛ったりしています」。
- サカサイモ=長芋、花苔=造花、干しスライム=マロニー。花苔は「1枚1枚型を取ると時間がかかる」ため、似た形の造花に樹脂を染み込ませて加工されました。
制作したのは岐阜県郡上市の食品サンプル会社・イワサキ・ビーアイ。2016年8月発売の3巻の広告ポスター用で、コミックナタリーが監修の現場に同席しています。
ダンジョン飯の魔物料理を立体化した人たちが語ったこと
『ダンジョン飯』は、ファンタジーの定番モンスターを「生物」として論理的に捉え、食材としてどう美味しく食べるかを描いた作品です。
その架空の料理を現実の立体物にする——という企画が2016年に行われました。作り手の言葉が、この作品の性格をそのまま言い当てています。
「架空の料理なので、こっちが表現してしまえば、もうそれが答え」
いちばん難しかったのは大サソリだったと、工場長の中田氏は語ります。「実際にサソリを食べたことがないし、切った断面を見たこともないので」。
現実に手本がないものを「美味しそうに」作る。その解き方がこれでした。
「架空の料理なのでこっちが表現してしまえば、もうそれが答えなのかなと(笑)」
その前段では「手っ取り早く作るために、あるものをどう使おうかっていう発想が多いですね。『歩き茸だったらエリンギだろう』とか」とも述べています。
現実の素材を流用して、架空のものに説得力を与える。これは『ダンジョン飯』という作品そのものの手口です。実在の生物の生態や調理法を持ち込むことで、存在しないモンスターが食べ物として成立する——原作がやっていることを、職人が別の素材でもう一度やったことになります。
「難しそう」より「面白そう」が勝った
この会社は普段、創作物の仕事を受けていません。依頼を聞いたときどう思ったかを問われて、中田氏はこう答えました。
「少し悩みましたけど、でも「難しそう」よりも「面白そう」のほうが勝ったので、やらせていただきました」
「こういう変わったやつは、ほかのサンプル屋さんはやらないんじゃないかな」とも。「型を作ってサンプルを作る」だけの仕事に比べて手間がかかるため、断られることが多いはずだといいます。
会社の姿勢については、先代会長の言葉を引いています。「形あるものはなんでもできるんだ。空気以外はなんでも作っちゃえ」。続けて「あくまで予算と期間があれば、ですけどね(苦笑)」。
担当編集は「こうしたい」ではなく「どうしましょう」から始めた
発注した側の話も残っています。企画の発端は、宣伝部が食品サンプルのパンフレットを持ってきたことでした。
「だからイワサキさんがどこまでできるのか、何ができるのか全然わからなかったこともあって、「こうしたい」じゃなくて「どうしましょう」って相談するところからでしたね」
「『こういうのやりたいんですけど……』って、最初はおそるおそる聞いたんですよ」と振り返り、断られることを想定していたと述べています。
ところが相手の反応は逆でした。「食品サンプル自体の作り方として『実際の食べ物から型を取ってる』っていう話をしてもらうところから始まって、『私たちが作りたいのは架空の食べ物です』という話をしたら、『じゃあ歩き茸はエリンギで流用しましょう』『こっちの食材はアレでいけるかも』みたいなアイデアをどんどんくださったので頼もしかったですね」。
干しスライムは、機械ではなく包丁で切られた
細部の判断がいちばん面白いのは、干しスライムです。作中では板状に干したスライムを包丁で切る場面があります。
「最初は細い麺のサンプルを作るときの押し出し機で作ろうかと思ったんですけどね。でもそれよりも、1本1本の太さが多少違ったほうがリアルなんじゃないかなってことで、手作業で切ってます」
素材のイメージはマロニー。実際に板状に伸ばしたものを作ってから、包丁で切ったといいます。作中の調理手順と同じ工程を踏んでいることになります。
ツヤを出すかどうかも現場で相談されました。担当編集の判断は「誰が見ても食品サンプルってわかるようにはツヤ出したほうがいいのかな。それにやっぱり、美味しそうなほうがいいですよね」。
「料理したあとは突拍子もないことは起こらない作品」
取材中、完成した素材の写真が「意外と普通」であることが話題になります。そこで担当編集が語ったのが、この作品の核心でした。
「ホントに美味しそうに見えるように作中では描いてるし、料理したあとは突拍子もないことは起こらない作品なので」
取材した記者の側も「『こんな気持ち悪いもの食べられないよー』っていうんじゃなくて、『架空の食材をリアルに食べることができるように描く』っていうのが見どころ」とまとめています。
ゲテモノ食いのギャグではない——この一点が、ほかの「変わったものを食べる」作品との決定的な違いです。だから食品サンプルにしたときも、出来上がりは普通の鍋料理に見えます。
食品サンプルは日本独特の文化だった
なぜ食品サンプルという手段を選んだのか。担当編集の説明には、企画意図が出ています。
「外国には食品サンプルがない国が多いです。韓国、中国、メキシコあたりには会社があったりもするんですけど、細かい作業ができるのは日本人独特みたいですね」
担当編集は宣伝部から「日本の技術の粋を集めた、外国にも人気のある文化ですよ!」と熱弁されたといい、「日本の作品だし、それなら海外にない食品サンプルという文化で立体化しようと」考えたそうです。
完成品はポスター撮影後、大きな書店に貸し出されました。担当編集は「実物はなんというか、伝わってくる情報量がすごい」と述べ、続いてミミックや宝虫のジャムも作る計画があると明かしています。
ダンジョン飯の基本情報

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ダンジョン飯 |
| 作者 | 九井諒子 |
| 掲載誌 | ハルタ(KADOKAWA)。2014年から連載 |
| 巻数 | 全14巻。9年半の連載を経て完結 |
| 内容 | 迷宮内で魔物を食料として調達し、自給自足で冒険するライオスらパーティの冒険譚。モンスターを論理的に「生物」として見たうえで調理する |
| 作者の経歴 | pixivやコミティアで頭角を現し、2011年3月に短編集『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』(イースト・プレス)でデビュー |
| 作者の受賞 | 2013年『ひきだしにテラリウム』で第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞 |
| 本作の受賞・順位 | 2015年度コミックナタリー大賞/このマンガがすごい!2016(宝島社)オトコ編/THE BEST MANGA 2016 このマンガを読め!/全国書店員が選んだマンガランキング2016 で1位。2024年に星雲賞コミック部門を受賞 |
| TVアニメ第1期 | 2024年放送。アニメーション制作はTRIGGER |
| TVアニメ第2期 | 「ダンジョン飯 Season2」2027年10月より放送・配信 |
| 第2期の主なスタッフ | 監督:宮島善博/シリーズ構成:うえのきみこ/キャラクターデザイン:竹田直樹/音楽:光田康典・土屋俊輔/音響監督:吉田光平/制作:TRIGGER |
| 主なキャスト | ライオス:熊谷健太郎/マルシル:千本木彩花/チルチャック:泊明日菜/センシ:中博史/イヅツミ:神戸光歩/ファリン:早見沙織/シスル:小林ゆう |
魔物料理はどの現実素材からできたか
作中の「大サソリと歩き茸の水炊き」を立体化したときの対応表です。作品の食材が現実の何に置き換えられたかが分かります。
2016年の食品サンプル制作で実際に使われた型と素材です。
| 作中の食材 | 使われた型・素材 | 職人の説明 |
|---|---|---|
| 歩き茸 | エリンギ | 「型を取れる大きさのキノコってエリンギしかないんですよね」。足が美味しいという設定のため、裏側の見えない部分も作られている |
| 大サソリ(身) | 伊勢海老 | ゆでて赤くなった状態を再現。ひとつひとつ形が違う |
| 大サソリ(殻) | 海老や蟹 | 「殻の部分は海老や蟹を使って、少し盛ったりしています」 |
| サカサイモ | 長芋 | 「普通に長芋を使いました」 |
| 花苔 | 造花 | 「1枚1枚型を取って作ると時間がかかるので、似た形の造花に樹脂を染み込ませて、色をつけて加工している」 |
| 干しスライム | マロニーのイメージ | 板状に伸ばしてから包丁で切った。押し出し機ではなく手作業。「1本1本の太さが多少違ったほうがリアル」 |
| 出汁 | 樹脂 | 出汁が見えやすいように、一部の具をあえて低く盛りつけている |
食品サンプルの基本的な流れは「型を用意する→樹脂を流し込む→色をつける」の3段階です。つまり現実に存在する食材の型がないと作れないのが前提で、架空の食材はそこに矛盾します。
その矛盾を、既存の食材を流用することで解いた——という記録になっています。制作は岐阜県郡上市のイワサキ・ビーアイ総合研究所が担当しました。
アニメ第2期の情報
第1期は2024年に放送されました。第2期の放送時期は、アメリカ・ロサンゼルスの「Anime Expo 2026」で発表されています。
2026年7月5日に発表された内容です。Anime Expo 2026のTRIGGERパネルで公開されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | ダンジョン飯 Season2 |
| 放送開始 | 2027年10月より放送・配信 |
| 発表の場 | Anime Expo 2026 内のTRIGGERパネル(現地時間2026年7月4日) |
| ティザービジュアル | キメラ化したファリンと、彼女を支配する狂乱の魔術師・シスル。2人を追うライオス、マルシル、チルチャック、センシ、イヅツミらが描かれている |
| 監督 | 宮島善博 |
| シリーズ構成 | うえのきみこ |
| キャラクターデザイン | 竹田直樹 |
| 音楽 | 光田康典、土屋俊輔 |
| アニメーション制作 | TRIGGER |
ビジュアルの時点で「キメラ化したファリン」と「シスル」が前面に出ているのが、第2期の範囲を示す最大の手がかりです。
第2期のキャストとして、シスル役の小林ゆうさん、ミスルン役の内山昂輝さん、ヤアド役の村瀬歩さんらが加わっています。
まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)
ここから先は、作り手の発言では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
第2期が原作のどこまでを描くか
話数と、対応する巻数は発表されていません。手がかりはティザービジュアルにキメラ化したファリンとシスルが描かれていることです。
原作は全14巻で完結しています。第1期が2024年に放送されたことを踏まえると、第2期で残りをすべて描き切るのは分量的に厳しそうに見えます。
ただしこれは筆者の見積もりで、構成しだいです。本記事では断定を避けます。
この作品が食べ物の話として成立している理由
担当編集の「料理したあとは突拍子もないことは起こらない作品」という言葉が、いちばん近い説明だと筆者は考えます。
モンスターを食べるという発想自体は珍しくありません。差が出るのは食べたあとに何も起きない点です。毒でも変身でもなく、ただ栄養になって腹が満ちる。だから読者は食事として受け取れます。
食品サンプルの完成品が「意外と普通」に見えたのは、その結果でしょう。ただしこれは筆者の解釈です。
どこから読むか、観るか
原作は全14巻で完結しており、結末まで読めます。第2期の放送は2027年10月なので、それまでに原作を読み切る時間は十分にあります。
筆者はアニメ第1期→原作をすすめます。この作品は料理の手順と生物の解説が細かく、絵と声で一度通したほうが頭に入りやすいからです。
ただし原作には九井諒子さんの線そのものの魅力があります。短編集『竜の学校は山の上』『ひきだしにテラリウム』から入るという道もあり、これは好みの問題です。
どこで読める?
原作コミックスはKADOKAWAから全14巻。電子版も主要な電子書店で配信されています。
作者の短編集『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』はイースト・プレス、『ひきだしにテラリウム』も刊行されています。
アニメ第1期の配信先は時期によって変わります。第2期は2027年10月放送開始予定です。
よくある質問
ダンジョン飯の魔物料理は食品サンプルになったことがある?
あります。2016年8月発売の3巻の広告ポスター用に「大サソリと歩き茸の水炊き」が制作されました。岐阜県郡上市のイワサキ・ビーアイが手がけています。
大サソリの食品サンプルは何でできている?
身は伊勢海老の型、殻は海老や蟹を使って作られました。
歩き茸は何の型?
エリンギです。職人は「型を取れる大きさのキノコってエリンギしかない」と説明しています。
原作は完結している?
全14巻で完結しています。ハルタ(KADOKAWA)で9年半の連載でした。
アニメ第2期はいつから?
「ダンジョン飯 Season2」が2027年10月より放送・配信されます。アニメーション制作はTRIGGER、監督は宮島善博さんです。
第2期のシスル役は誰?
小林ゆうさんです。ティザービジュアルにはキメラ化したファリンとともに描かれています。
まとめ
『ダンジョン飯』は架空の魔物を食材として論理的に調理する作品ですが、その料理は実際に食品サンプルとして作られたことがあります。2016年、3巻の広告ポスター用に「大サソリと歩き茸の水炊き」を制作した職人によれば、大サソリの身は伊勢海老、殻は海老や蟹、歩き茸はエリンギ、サカサイモは長芋、干しスライムはマロニーのイメージ、花苔は造花でした。工場長は「架空の料理なのでこっちが表現してしまえば、もうそれが答えなのかな」と述べ、これは原作がやっていることと同じ手口です。担当編集は「料理したあとは突拍子もないことは起こらない作品」と語り、ゲテモノ食いではないことを強調しました。原作は全14巻で完結し、アニメ第2期「ダンジョン飯 Season2」は2027年10月から放送されます。
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出典
- コミックナタリー 九井諒子「ダンジョン飯」特集 食品サンプル職人が大サソリに挑む(2016年)
- コミックナタリー 九井諒子「ダンジョン飯」特集 食品サンプル職人が大サソリに挑む(2016年) 2ページ目(発注の経緯・食品サンプルの作り方・日本独特の文化であること)
- コミックナタリー 九井諒子「ダンジョン飯」特集 食品サンプル職人が大サソリに挑む(2016年) 4ページ目(工場長の証言・難しかった食材・盛りつけの工夫)
- コミックナタリー「ダンジョン飯」第2期2027年10月放送、キメラ化したファリン収めたビジュアル公開(2026年7月5日)
- コミックナタリー「ダンジョン飯」9年半の連載に幕 九井諒子のグルメファンタジー、単行本は12月に
本文・画像とも出典を明記したうえで、必要な範囲だけを引用しています。画像は公式に公開されたものです。©九井諒子・KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会
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