※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。
『東京卍リベンジャーズ』を読んでいて、つらくなった場面があるはずです。仲間が死に、状況が悪化し、タイムリープしてもなお引き返せない。あの暗さには、はっきりした理由がありました。作者の和久井健さんはこう語っています。「このマンガはハッピーエンドで終わらせると決めていたんですよ。ただ、そうするために途中でハッピーな要素は出せないなと思って、あえてダークな展開にしていったんです」。この記事では、和久井さんがHYDEさんとの対談で明かした設計を柱に、この作品がどう組まれていたのかを読み解きます。
📘 この記事でわかること
- 暗い展開は「ハッピーエンドを際立たせるため」だったという作者の説明
- 結末は最初から決まっていて、途中は毎週詰めていたという作り方
- 人気絶頂での完結について「むしろこれでも引き延ばしたくらい」という発言
- 作者がもの作りで心がけている「共感性」という基準
- 全31巻・第44回講談社漫画賞という確認できるデータ
- 作者が語っていないことと、読者の解釈の境目
📈 数字で見る東京卍リベンジャーズ
東京卍リベンジャーズを読み解く3つの鍵
🔑 作者が語った設計
- 暗い展開は手段だった。「このマンガはハッピーエンドで終わらせると決めていた」。そのために「途中でハッピーな要素は出せないなと思って、あえてダークな展開にしていった」と語っています。
- 結末は最初から決まっていた。途中は決まっていなかった。「終わり方は考えていたんですけど、途中のストーリーは毎週毎週編集と打ち合わせで詰めていきました」。伏線が後付けに見える箇所があるとしたら、実際にそうです。
- 人気絶頂での完結は迷いなく決めていた。「終わるタイミングは初期の段階でしっかり決めてました」。しかも「むしろこれでも引き延ばしたくらいですね」と述べています。
以下の引用は、音楽ナタリーが2023年に掲載したHYDE×和久井健の特別対談からです。HYDEさんがマイキーの仮装をしたことをきっかけに実現した企画で、作品の作り方にかなり踏み込んでいます。
東京卍リベンジャーズの作者が語ったこと
和久井健さんは顔出しをしておらず、作品について語る機会も多くありません。
そのなかで内容に踏み込んだ記録が、HYDEさんとの対談です。HYDEさんがハロウィンでマイキーの仮装をしたことから生まれた企画で、読者としての質問が作者に直接ぶつけられています。以下はそこからの引用です。
「ハッピーエンドにするために、あえてダークにした」
HYDEさんは全巻を読んだうえで「ドラケンが死ぬあたりから胸が痛くなってきて。読むのがつらかったなあ」と率直に伝えます。それに対する和久井さんの答えが、この作品の設計を一言で説明していました。
「自分の中では、このマンガはハッピーエンドで終わらせると決めていたんですよ。ただ、そうするために途中でハッピーな要素は出せないなと思って、あえてダークな展開にしていったんです」
HYDEさんが「そうしないとハッピーエンドが際立たないですもんね」と受けると、和久井さんは「そうなんです」と応じています。
つらい展開は物語の失敗ではなく、終着点から逆算された配分だということです。読んでいて苦しくなるのは、作者がそう作っているからでした。
終わり方だけが決まっていて、途中は毎週詰めていた
現在・過去・未来を行き来する構造について、HYDEさんが「それをまとめるのは大変だったんじゃないですか?」と問いかけたときの答えです。
「終わり方は考えていたんですけど、途中のストーリーは毎週毎週編集と打ち合わせで詰めていきました」
ゴールだけが固定されていて、そこへの道筋は走りながら決めていたという作り方です。
この前提で読み直すと、伏線の見え方が変わります。すべてが最初から仕込まれていたわけではありません。一方で、たどり着く先は一貫していました。「終わるタイミングは初期の段階でしっかり決めてました」とも語っています。
「むしろこれでも引き延ばしたくらい」
本作は人気絶頂の2022年11月に完結しました。HYDEさんが「人気絶頂で連載を終了させるのは嫌じゃなかったですか?」と尋ねます。
「いや、むしろこれでも引き延ばしたくらいですね」
「せっかく人気があるから続けたいとはならなかった?」という重ねての問いにも「全然ならなかったんです」。理由のひとつは作業量でした。「週7で描いていたので一度休みたいなと(笑)」。
本編の続編については「スピンオフ作品があるので今でも打ち合わせをしたりするんですけど、本編の続きをこれ以上描く気はなくて」と明言しています。
基準は「共感性があるかどうか」
もの作りで心がけていることを問われたときの答えです。HYDEさんが「ポップであること」と答えたのを受けての発言でした。
「僕の場合は共感性があるかどうかですね。それがないと読み手には届かないので大事にしているところです」
続けて「その点を踏まえてすごく暗いストーリーとか、明るすぎる展開になりすぎないようにバランスを考えてマンガを描いている」と述べています。どうやってバランスを保つのかという問いへの答えが率直でした。「担当編集者に意見をもらって、もし極端なところがあったら調整していくようにしてます。自分の世界観をそのまま世の中に出しても売れないという自覚があるんですよ」。
デビュー作『新宿ホスト』に続く『新宿スワン』を連載していた頃は編集とケンカもしたといいますが、「今はもう何を言われても怒らないようにしています。言うことを素直に聞いて」。
26歳まで、マンガを描いていなかった
和久井さんのデビューは遅く、それまではスカウトマンなど『新宿スワン』の世界に近い仕事をしていました。転機はラーメン屋にありました。
「僕は頭悪いし編集長になんてなれないけど、マンガでだったら人の心を動かすことはできるんじゃないかって」
きっかけは安野モヨコさんの『働きマン』でした。「当時は精神的にも肉体的にも疲れる仕事をしていて、『もう嫌だ』と思いながら毎日働いてたんです。そんなときにラーメン屋に入って、『モーニング』を開いたら『働きマン』が載ってて。確かマンガ誌の編集長が出てくるエピソードで、その編集長がすごくカッコよかったんですよ」。
そこから「仕事を辞めて1年くらい家にこもって描く練習をした」。背景まで1人で仕上げた作品を毎週ヤングマガジン編集部に持ち込み、26歳ごろにデビューしています。タイムリープして人生をやり直す物語を、人生を大きく切り替えた人が描いていたことになります。
千冬を描くときはピクミンをイメージしていた
HYDEさんが好きなキャラクターとして松野千冬を挙げたときの、和久井さんの返しです。
「描くときはピクミンをイメージしてました(笑)。とにかくボスに尽くし続けるという」
またマイキーについては「モデルはいない」と明言しています。キャラクター設定は人と相談せず1人で考え、「ファッションも好きなので、生地の質感などもイメージしながら服の設定まで自分で考えてます」とのこと。
感情の入り方も語られています。マイキーが「助けてくれ」と泣きながらタケミチの手をつかむ場面について「あそこは泣きながら描きましたね。原稿を描くときが一番キャラクターに感情移入しているので、ああいうシーンは自分も一緒に泣いちゃいます」。
東京卍リベンジャーズの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | 東京卍リベンジャーズ |
| 作者 | 和久井健 |
| 掲載誌 | 週刊少年マガジン(講談社) |
| 連載期間 | 2017年〜2022年11月 |
| 巻数 | 全31巻 |
| 受賞 | 2020年 第44回講談社漫画賞 少年部門 |
| 映像化・舞台化 | 2021年にテレビアニメ化、実写映画化、舞台化 |
| ミュージカル | 東京・大阪で上演。テニミュなどのスタッフが参加した |
| 海外 | 担当編集によればコミックがフランスやスペインで売れている |
| 作者のデビュー | 2004年9月期のヤングマガジン月間新人漫画賞で「新宿ホスト」が佳作。2005年に別冊ヤングマガジンへ掲載されデビュー |
| 作者の他作品 | 『新宿スワン』(2005年〜2013年10月、2015年春に綾野剛主演で実写映画化)/『セキセイインコ』/『デザートイーグル』 |
| 作画 | アナログ。ペン入れは1回で、線の太さは途中で止めて変えている |
作者が語った制作の方法
この作品がどう作られていたのか、対談で明かされた内容を整理します。
以下も同じ対談からの引用です。作り方がかなり具体的に語られています。
| 項目 | 作者の説明 |
|---|---|
| 結末 | 「終わり方は考えていた」。終わるタイミングも初期の段階で決めていた |
| 途中の展開 | 「毎週毎週編集と打ち合わせで詰めていきました」 |
| 暗い展開の理由 | ハッピーエンドで終わらせると決めていたため、「途中でハッピーな要素は出せないなと思って、あえてダークな展開にしていった」 |
| キャラクター設定 | 人とあまり相談せず1人で考える。服の設定も生地の質感までイメージして自分で決める |
| マイキーのモデル | 「いないんです」 |
| 作画 | アナログ。「デジタルだと間違った線を直したくなっちゃうと思うんですよ」「それも含めてのライブ感がいいんです」 |
| 作業ペース | 「週7で描いていた」 |
| 判断基準 | 「共感性があるかどうか」。極端になったら担当編集の意見で調整する |
| 続編 | スピンオフの打ち合わせはあるが「本編の続きをこれ以上描く気はなくて」 |
とくに「自分の世界観をそのまま世の中に出しても売れないという自覚があるんですよ」という一言が、この作品の性格をよく表しています。ヤンキー漫画の題材を扱いながら広い読者に届いたのは、その自覚のうえでバランスを取り続けた結果でした。
海外での受容についても和久井さんは考えを述べています。「ヤンキーの世界ってギャング文化に近いものがありそうだし、例えばフランスだと騎士道文化と通じる部分もあるのかもしれないです」。
和久井健という作家の経歴
デビューが遅いこと、そして前歴が作品と地続きであることは、この作家を理解するうえで外せません。
以下は音楽ナタリーの記事に付されたプロフィールによる情報です。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| デビュー前 | スカウトマンなど、のちに『新宿ホスト』『新宿スワン』で描く世界に近い仕事をしていた |
| きっかけ | 安野モヨコ『働きマン』をラーメン屋で読み、マンガ家を志す。仕事を辞めて1年ほど家にこもって描く練習をした |
| 2004年9月期 | ヤングマガジン月間新人漫画賞で「新宿ホスト」が佳作を受賞 |
| 2005年 | 「新宿ホスト」が別冊ヤングマガジンに掲載されデビュー。同年『新宿スワン』の連載を開始 |
| 2013年10月 | 『新宿スワン』完結。2015年春に綾野剛主演で実写映画化 |
| 2013年12月 | 第2作『セキセイインコ』を開始 |
| 2015年 | 週刊少年マガジンへ移り『デザートイーグル』を連載 |
| 2017年 | 『東京卍リベンジャーズ』連載開始 |
| 2020年 | 第44回講談社漫画賞 少年部門を受賞 |
| 2021年 | テレビアニメ化、実写映画化、舞台化 |
| 2022年11月 | 週刊少年マガジンでの連載が完結(最終31巻は2023年1月17日発売。アニメ!アニメ!) |
少年誌への持ち込みでは「作風が合わなくて採用されず」、そこで「もっと自分に近いものを描いたほうがいいよ」という助言を受けてホストを主人公にした作品を描いたら評価された——という経緯も語られています。自分の見てきた世界を描くことでデビューした作家だということです。
まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)
ここから先は、作者の発言では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
タイムリープの設定に整合性はあるのか
現在・過去・未来を行き来する構造について、作者はルールを体系的に説明した記録を残していません。
手がかりは「終わり方は考えていたんですけど、途中のストーリーは毎週毎週編集と打ち合わせで詰めていきました」という発言です。設定の整合性より、その週の話が読者に届くことを優先した作りだと筆者は読んでいます。細部を突き詰めると矛盾が見つかるかもしれませんが、それはこの作品の評価軸ではありません。ただしこれは解釈です。
続編はあるのか
本編は2022年11月に連載が完結し、2023年1月17日発売の31巻で全31巻となりました。和久井さんは「スピンオフ作品があるので今でも打ち合わせをしたりするんですけど、本編の続きをこれ以上描く気はなくて」と述べています。
本編の続編は作者が明確に否定している、というのが現時点で確認できることです。新作については「いろいろ思いついたアイデアはあるんですが、まだ形にはしてない感じです」と語っていました(2023年時点)。
なぜ海外でも読まれるのか
和久井さん自身が挙げた仮説は「ヤンキーの世界ってギャング文化に近いものがありそうだし、例えばフランスだと騎士道文化と通じる部分もあるのかもしれない」というものでした。ただしこれは本人も推測として語っています。
筆者としては、「共感性があるかどうか」を基準に極端さを削り続けたことのほうが効いていると見ています。文化的な固有性が強すぎる作品は翻訳で失われますが、この作品はそこを編集と一緒に調整し続けていました。これも解釈です。
どこで読める?
紙のコミックスは講談社コミックス(週刊少年マガジン)から全31巻が刊行されています。完結済みなので全巻セットでも手に入ります。
電子版は主要な電子書店で配信されています。スピンオフ作品も複数出ています。
テレビアニメ、実写映画、舞台、ミュージカルと映像化・舞台化も多数あります。配信先は時期によって変わるため、視聴前に最新の状況を確認してください。
よくある質問
東京卍リベンジャーズはなぜ暗い展開が続く?
作者の和久井健さんが「このマンガはハッピーエンドで終わらせると決めていた」「そうするために途中でハッピーな要素は出せないなと思って、あえてダークな展開にしていった」と説明しています。
結末は最初から決まっていた?
決まっていました。「終わり方は考えていた」「終わるタイミングは初期の段階でしっかり決めてました」と語っています。一方で途中の展開は「毎週毎週編集と打ち合わせで詰めていきました」とのことです。
人気があるのになぜ完結した?
作者が最初から終わるタイミングを決めていたためです。「むしろこれでも引き延ばしたくらいですね」「週7で描いていたので一度休みたいなと(笑)」とも語っています。
本編の続編はある?
作者は「スピンオフ作品があるので今でも打ち合わせをしたりするんですけど、本編の続きをこれ以上描く気はなくて」と明言しています。
マイキーにモデルはいる?
いません。作者が対談ではっきり「いないんです」と答えています。キャラクター設定は人と相談せず1人で考えているそうです。
全部で何巻?
全31巻です。週刊少年マガジンで2017年から2022年11月まで連載され、2020年に第44回講談社漫画賞 少年部門を受賞しました。
まとめ
『東京卍リベンジャーズ』を読んでいてつらくなるのは、作者がそう作っているからです。和久井健さんはHYDEさんとの対談で「このマンガはハッピーエンドで終わらせると決めていたんですよ。ただ、そうするために途中でハッピーな要素は出せないなと思って、あえてダークな展開にしていったんです」と語っています。結末と終わるタイミングは初期の段階で決まっていて、途中の展開だけが毎週の打ち合わせで詰められていました。人気絶頂での完結についても「むしろこれでも引き延ばしたくらい」。そして作品づくりの基準は「共感性があるかどうか」で、極端になったら編集の意見で調整する——「自分の世界観をそのまま世の中に出しても売れないという自覚があるんですよ」。26歳までマンガを描いていなかった作家の、徹底した客観性がここにあります。
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出典
- 音楽ナタリー HYDE×和久井健 特別対談(2023年)
- 同 2ページ目(デビューまでの経緯・もの作りの基準)
- コミックナタリー「東京卍リベンジャーズ×HYDEがコラボ、和久井健が「えいやっ」なマイキー描き下ろす」
引用はすべて出典付きで、範囲を絞って載せています。画像は使っていません。©和久井健/講談社
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