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チェンソーマン 考察|「ジャンルが変わる」のは狙い。作者が語った戦略的な作り方

チェンソーマン ヒナとAIくんの考察4コマ

※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。

『チェンソーマン』を読んでいて「話が急に別ジャンルになった」と感じたことはありませんか。あるいは「このキャラがこんなことをするのか」と戸惑ったことは。そのどちらも、作者が意図してやっていることです。藤本タツキさんはデビュー連載『ファイアパンチ』のインタビューで、自身の作り方をかなり率直に説明しています。「読者が事前に予想していた展開からまったく別の方向へ進んでいくマンガを作りたい」。この記事では、その作劇論を柱にチェンソーマンの構造を読み解きます。ネタバレを含む結末の解釈ではなく、作られ方の話です。

📘 この記事でわかること

  • 「ジャンルが変わる」構造は作者が狙ってやっていること
  • グロテスクな描写を入れる理由についての作者自身の説明
  • キャラクターを変化させるのは「変化が怖い」という読者心理への挑戦だという発言
  • 「キャラが勝手に動いちゃうのが怖い」という、意外な制作姿勢
  • 全24巻・全232話という確認できるデータと、第2部の完結
  • 作者が語っていないことと、読者の解釈の境目

📈 数字で見るチェンソーマン

全24巻
第1部11巻+第2部。2026年3月25日に第2部が完結
全232話
第1部97話+第2部135話
約7年
連載期間(2018年12月〜2026年3月)
107.9億円
劇場版「レゼ篇」の興行収入(公開185日・2026年3月23日時点)

チェンソーマンの読み方が変わる3つの前提

🔑 作者が自分で説明していること

  1. ジャンルが変わるのは仕様。藤本さんは「読者が事前に予想していた展開からまったく別の方向へ進んでいくマンガを作りたい」と明言しています。話が崩れたのではなく、そう設計されています。
  2. グロ描写には役割がある。「きれいな部分とか、優しいものを描くなら残酷な部分を描かないといけない。そのほうが優しい部分に触れたときに、映える」。単体で受け取るものではありません。
  3. キャラクターは変化させる前提で置かれている。「善だと思っていたキャラクターが、何かに触れて悪になっていく」ような変化を意識的にやると述べています。「このキャラにこんなことをしてほしくない」という反応まで織り込み済みです。

以下の引用は、藤本さんのデビュー連載『ファイアパンチ』1巻発売時のインタビュー(2016年)からです。チェンソーマンについて語ったものではありませんが、本人が自分の作り方を体系的に説明した数少ない記録で、そのままチェンソーマンにも当てはまります。

チェンソーマンの作者が語った作り方

藤本タツキさんが作品について語る機会はそれほど多くありません。ただ、デビュー連載『ファイアパンチ』の1巻が出たとき、コミックナタリーがかなり踏み込んだインタビューをしています。

そこで語られた方法論は、のちの『チェンソーマン』を読むうえでそのまま使えます。以下はそこからの引用です。

「ジャンルが変わるマンガを作りたい」

藤本作品を読んでいて、途中で「これはもう最初と別の話だ」と感じる瞬間があります。それは偶然ではありません。

「僕は物語が展開される中で、ジャンルが変わるというか、読者が事前に予想していた展開からまったく別の方向へ進んでいくマンガを作りたいと思っているんです」
— 藤本タツキ(作者)(出典:コミックナタリー「ファイアパンチ」藤本タツキ インタビュー(2016年))

参照先として挙げているのは、映画『ゴーン・ガール』、アニメでは『魔法少女まどか☆マギカ』『がっこうぐらし!』『ハイスクール・フリート』。「それが成功しているのかはわからないですけど、どれも話題になっているじゃないですか。話題を作るうえで、そういう試みは必要だなと思って」と続けています。

そして『ファイアパンチ』については「今後3回か4回、ジャンルが変わります」と予告していました。ジャンルの転換は、藤本作品における事故ではなく手法だということです。チェンソーマンで戸惑った経験があるなら、それは想定された反応です。

グロ描写は「意味のあるグロ」でなければいけない

藤本作品には残酷な描写が多く、そこで離れる読者もいます。ただ本人は、無条件でやっているわけではないと説明しています。

「僕はきれいな部分とか、優しいものを描くなら残酷な部分を描かないといけないと思っていて。そのほうが優しい部分に触れたときに、映えるじゃないですか」
— 藤本タツキ(作者)(出典:コミックナタリー「ファイアパンチ」藤本タツキ インタビュー(2016年))

「グロければいい、ただグロ描写を描きたいと思っているわけではなくて、意識してやっているものなんです」。優しさを描くための対比として置かれている、という説明です。

また「シリアスな会話の中にギャグっぽい描写を入れたりする」ことにも触れています。理由は「主人公の復讐心を描き続けると作品がすごく暗くなってしまうので。間を持たせられるんじゃないか」。チェンソーマンでも深刻な場面に間の抜けたやり取りが挟まりますが、あれは配分の計算です。

「変化が怖い」という読者心理に、あえて踏み込む

キャラクターの扱いについても、はっきりした考えがありました。手本として挙げたのは富野由悠季さんの『機動戦士ガンダム』シリーズです。

「よくアニメやマンガで「このキャラにはこういう行動はとってほしくない」ってファンから声が上がることがありますけど、それは「変化が怖い」ってことなんじゃないかと思っていて」
— 藤本タツキ(作者)(出典:コミックナタリー「ファイアパンチ」藤本タツキ インタビュー(2016年))

そのうえで「そういう変化に対してすごくハマる人もいれば、絶対に受け付けないって人もいると思うので心配な部分ではありますが、自分が面白いと思うことは全部やりたい」と述べています。

賛否が割れることを承知のうえで、キャラクターを変えていく。チェンソーマンで登場人物の印象が反転していく展開は、この方針の延長線上にあります。

「キャラが勝手に動いちゃうのが怖くて」

漫画家の発言としてよく聞くのが「キャラクターが勝手に動き出す」という言い方です。藤本さんは逆でした。

「計算して描いているので、キャラが勝手に動いちゃうのが怖くて。今のところは僕が考えたとおり、それぞれのキャラが動いてくれています」
— 藤本タツキ(作者)(出典:コミックナタリー「ファイアパンチ」藤本タツキ インタビュー(2016年))

キャラクターに自分を投影することもないと明言しています。作者の内面がにじみ出た作品ではなく、設計された作品だという自己認識です。

ここは他の作家と比べると際立ちます。たとえば『進撃の巨人』の諫山創さんは「主人公のやることが決まっているあまり、コントロールできないことは僕にもありました」と語っています。同じように読者を驚かせる作品でも、作り手の立ち位置はまったく違います。

デビュー作は『アンパンマン』から逆算して作られた

「戦略的に描く」という言葉がどれくらい具体的なのか。『ファイアパンチ』の着想を聞かれたときの答えが、その水準を示しています。

「売れるマンガを描きたいと思っていた」「放っておくと感覚的に物語を作ってしまうので、『戦略的に描いてみよう』と、いろいろな作品を研究してみて」。そこで今も長く愛されている作品として挙げたのが『ドラえもん』『サザエさん』『アンパンマン』でした。

「「アンパンマン」からヒントを得ました」
— 藤本タツキ(作者)(出典:コミックナタリー「ファイアパンチ」藤本タツキ インタビュー(2016年))

海外で奇抜だと言われるのは「自分の顔を分け与えて食べさせる部分」。そこから「飢餓にあえぐ村で、自分の肉を村人に分け与える」という設定が生まれ、アンパンチからファイアパンチという言葉が出てきた。炎を目立たせるために寒い世界にした——という順序です。

さらに主人公アグニは「アンパンマン」の「ア」、ドマは「ドラえもん」の「ド」、サンは「サザエさん」の「サ」から名付けられています。ここまで来ると、感覚で描く作家というイメージは完全に崩れます。

チェンソーマンの基本情報

チェンソーマン 公式サイトのキービジュアル
チェンソーマン 公式サイトより(出典:chainsawman.dog)
項目内容
作品名チェンソーマン
作者藤本タツキ
掲載誌第1部:週刊少年ジャンプ(集英社)/第2部:少年ジャンプ+
連載期間第1部:2018年12月3日〜2020年12月14日/第2部:2022年7月13日〜2026年3月25日
巻数ジャンプコミックス 全24巻。最終24巻は2026年6月4日発売
話数全232話(第1部 全97話+第2部 全135話)
アニメTVアニメ(2022年・全12話)/劇場版『チェンソーマン レゼ篇』(2025年9月19日公開)/新作『チェンソーマン 刺客篇』が制作発表済み
アニメーション制作MAPPA
劇場版の興行成績公開初日から4日間で観客動員98.6万人・興収15.2億円。興収107.9億円(公開185日・2026年3月23日時点)。3月29日時点では108.1億円(アニメ!アニメ!)
主題歌TVシリーズOPは米津玄師「KICK BACK」/劇場版主題歌は米津玄師「IRIS OUT」、エンディングは作詞作曲・米津玄師、歌唱・宇多田ヒカルの「JANE DOE」
作者の経歴秋田県出身。第9回クラウン新人漫画賞で「恋は盲目」が佳作を受賞し、2014年にジャンプSQ.19でデビュー。読切「シカク」「予言のナユタ」「人魚ラプソディ」など。2016年4月から少年ジャンプ+で『ファイアパンチ』を連載(全8巻)

チェンソーマンで確認できること

連載が長期にわたったため、いまどういう状態なのかが分かりにくくなっています。時系列で並べます。

✅ 作品・公式で確認できること
以下は公表されている事実です。「第3部があるのか」といった議論の前に、まず現状を押さえておきます。
時期できごと
2016年4月藤本タツキが少年ジャンプ+で『ファイアパンチ』を連載開始(全8巻、2018年2月に最終巻)
2018年12月3日『チェンソーマン』第1部が週刊少年ジャンプで連載開始
2020年12月14日第1部が完結。全97話
2021年12月18日ジャンプフェスタ2022で藤本と担当編集・林士平の対談番組を配信。第2部の開始とアニメ化が発表された
2022年7月13日第2部が少年ジャンプ+で連載開始
2022年10月TVアニメ放送開始(全12話)。アニメーション制作はMAPPA、OPは米津玄師「KICK BACK」
2025年9月19日劇場版『チェンソーマン レゼ篇』公開。4日間で観客動員98.6万人・興収15.2億円
2026年3月23日劇場版の興行収入が107.9億円に(公開185日時点)
2026年3月25日第2部が完結。全135話
2026年6月4日単行本最終24巻を発売

第2部はすでに完結しています。単行本は全24巻でまとまりました。新作アニメ『チェンソーマン 刺客篇』の制作も発表されています。

なお第1部について、藤本さんはジャンプフェスタ2022の対談で、キャラクターのデザインを先行させて物語を作ることには抵抗があるものの、チェンソーマンに限っては主人公デンジが変身した後の姿をどうしても登場させたかったと説明しています。あのビジュアルが先にあった、ということです。

作者が影響を公言しているもの

藤本作品の「どこかで見たような、でも見たことのない感じ」がどこから来ているのか。本人が挙げた参照先を並べます。

🗣 作者・制作陣が語ったこと
以下も『ファイアパンチ』インタビューからの引用です。
分野挙げた作品・作家何を取ったか
構造『ゴーン・ガール』『魔法少女まどか☆マギカ』『がっこうぐらし!』『ハイスクール・フリート』途中でジャンルが変わる作り
キャラクターの変化富野由悠季『機動戦士ガンダム』シリーズ善だと思っていたキャラが何かに触れて悪になっていく
着想(ファイアパンチ)『アンパンマン』自分の体を分け与えて食べさせるという発想
長く愛される作品の研究対象『ドラえもん』『サザエさん』『アンパンマン』「売れるマンガ」を戦略的に作るための分析
作画沙村広明トーンを多用せず服の影を線で表現し、抜くところは抜く描き方
巻末のヒキ—「単行本の最後で衝撃的な展開があると、次の巻も買いたくなる」

作画について藤本さんは「沙村先生の絵が好きなので、常々『沙村先生のように描こう』と思ってやっています」と語り、連載開始前に担当編集に頼んで読んでいない沙村作品の単行本を送ってもらったとまで明かしています。

中学時代には頭の中に雑誌を作って7本連載していたという話も。「頭の中の連載が最終回を迎えたときに、自分で感動して涙が出そうになった」そうです。

まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)

❓ まだ分かっていないこと(以下は推測です)
ここから先は、作者の発言では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
『チェンソーマン』9 巻発売記念スペシャルPV(ジャンプチャンネル)

第1部の結末をどう受け取るか

第1部の終わり方については、作者が意味を確定させた一次情報に本記事の調査範囲でたどり着けませんでした。

手がかりになるのは「単行本の最後で衝撃的な展開があると、次の巻も買いたくなる」という発言のほうかもしれません。ヒキを作ることを明確に意識している作家です。結末に見える場面が、次を読ませるための装置である可能性は常にあります。ただしこれは解釈です。

第3部はあるのか

第2部は2026年3月25日に完結し、単行本は全24巻でまとまりました。2026年9月時点で、第3部の告知は確認できていません。

一方でアニメは続いており、新作『チェンソーマン 刺客篇』の制作が発表されています。作品としての展開は止まっていないが、原作漫画の続編は発表されていない——これが現状です。「第3部がある」と書いている記事を見かけたら、出典を確認してください。

『ファイアパンチ』の方法論はどこまで当てはまるのか

本記事で引用したのは2016年、『ファイアパンチ』1巻発売時のインタビューです。チェンソーマンについて語ったものではありません。

10年のあいだに作者の考えが変わった可能性は当然あります。とはいえ「ジャンルが変わる」「グロで優しさを映えさせる」「キャラを変化させる」という3点は、チェンソーマンでも観察できます。方法論として継続していると読むのが自然だと筆者は考えていますが、本人がそう言ったわけではありません。

どこで読める?

紙のコミックスはジャンプコミックス(集英社)から全24巻が刊行されています。最終24巻は2026年6月4日発売です。

電子版は集英社の「ゼブラック」や少年ジャンプ+をはじめ主要な電子書店で配信されています。第2部は少年ジャンプ+で連載されました。

TVアニメと劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は各配信サービスで扱われています。配信先は時期によって変わるため、視聴前に最新の状況を確認してください。

よくある質問

チェンソーマンで急にジャンルが変わるのはなぜ?

作者の藤本タツキさんが「読者が事前に予想していた展開からまったく別の方向へ進んでいくマンガを作りたい」と語っています。意図的な手法です。

グロテスクな描写が多いのはなぜ?

「きれいな部分とか、優しいものを描くなら残酷な部分を描かないといけない。そのほうが優しい部分に触れたときに、映える」と説明しています。グロ単体が目的ではありません。

キャラクターの扱いが急に変わるのは?

作者が意識的にやっていることです。「善だと思っていたキャラクターが、何かに触れて悪になっていく」という変化を面白いと考えており、賛否が割れることも承知のうえだと述べています。

第2部は終わった?

終わっています。2026年3月25日に完結し、全135話。単行本は全24巻で、最終巻は2026年6月4日発売です。

第3部はある?

2026年9月時点で、原作漫画の第3部は発表されていません。アニメは新作『チェンソーマン 刺客篇』の制作が発表されています。

作者はどんな作家?

秋田県出身。2014年にデビューし、2016年から少年ジャンプ+で『ファイアパンチ』を連載(全8巻)。自身の作り方を「戦略的に描く」と説明する、計算型の作家です。

まとめ

『チェンソーマン』の考察は結末の解釈に集中しがちですが、作者の藤本タツキさんは自分の作り方をかなり具体的に語っています。デビュー連載『ファイアパンチ』のインタビューでの発言です。「読者が事前に予想していた展開からまったく別の方向へ進んでいくマンガを作りたい」。「きれいな部分とか、優しいものを描くなら残酷な部分を描かないといけない。そのほうが優しい部分に触れたときに、映える」。「計算して描いているので、キャラが勝手に動いちゃうのが怖くて」。そして『ファイアパンチ』は『アンパンマン』から逆算して作られ、主要人物の名前は「ドラえもん」「サザエさん」「アンパンマン」の頭文字から取られていました。感覚で描く作家という印象とは、ずいぶん違います。第2部は2026年3月25日に完結し、単行本は全24巻です。

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出典

本文・画像とも出典を明記したうえで、必要な範囲だけを引用しています。画像は公式に公開されたものです。©藤本タツキ/集英社

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