※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。
「ジョジョの奇妙な冒険 考察」で人気の論点は、だいたい3つに集約されます。世代を超えた「意志の継承」がテーマである/各部のラスボスは時間系スタンドを持つ/第7部以降は世界が断絶している。この3つは、実はどれも読者の発見ではありません。作者の荒木飛呂彦さん自身が説明しているか、作品の設定として明示されているかのどちらかです。この記事では、どこまでが確認できることでどこからが解釈なのかを分けたうえで、アニメ化にあたって制作陣が掲げた「荒木先生を科学する」という方針も紹介します。
📘 この記事でわかること
- 第1部の連載開始時点で、すでに第3部までの構想があったという作者の説明
- 各部の最終ボスが時間に関する能力を持つ理由についての作者の発言
- 第7部以降が別の世界線であることは設定として明示されていること
- アニメ制作陣が掲げた「荒木先生を科学する」という方針
- 擬音の文字エフェクトは「読めなくていい」と考えられていたこと
- 作品として確認できることと、読者の解釈の境目
📈 数字で見るジョジョの奇妙な冒険
ジョジョの奇妙な冒険の定番考察は、どこまで裏が取れているか
🔑 3つの論点の答え合わせ
- 「意志の継承」は後付けではない。作者は第1部の連載を始めた時点ですでに第3部までの構想を持っており、『エデンの東』のように世代が変わっていく話を核にできたらいい、と考えていたと語っています。誰にも言わなかったそうですが。
- 「ラスボスは時間系」は偶然ではない。各部の最後の敵が時間に関する能力を持つ傾向について、作者は「時間を支配できる奴がいたら無敵だろうな、どうやって主人公は勝つだろう、と思う」と答えています。
- 「7部以降の断絶」は解釈ではなく設定。Part7以降はPart6までとは別の世界線で、石仮面や波紋といった要素は基本的にリセットされ、スタンドだけが引き継がれています。そのスタンドも定義し直されています。
つまりこの3つは「深読み」ではなく、確認できる情報です。考察の出発点をここに置き直すと、その先の議論がだいぶ整理されます。
ジョジョの奇妙な冒険をアニメにした人たちが語ったこと
原作については作者の発言がある程度公開されていますが、アニメ版の設計思想がまとまって語られた記録は多くありません。
ひとつが、TVアニメ『スターダストクルセイダース』放送直前の2014年、ディレクターの津田尚克さんとシリーズディレクターの鈴木健一さんの対談です。「ジョジョらしさ」をどう作ったのかが、かなり具体的に語られています。
制作方針は「荒木先生を科学する」だった
アニメ化にあたって現場が掲げたスローガンは「1枚の絵をパッと見て『ジョジョ』だとわかるアニメ作りをしよう」だったといいます。では、その「ジョジョであること」をどう担保したのか。津田さんの答えが明快でした。
「ことあるごとに荒木先生を分析します。「荒木先生を科学する」と言っているんですが」
具体的には「荒木先生の見た映画はなるべく見る」。理由も添えられています。「表面をなぞるのは原作を読めばできるので、その奥にあるものを知るには、結局荒木先生を知るしかない」。
なお、荒木さん本人は「現場にお任せします」という姿勢だそうで、確認を取るのは「このキャラクターの名前ないんですけど、どうしましょう」といった、後の話に影響が出かねない細部に限られていたといいます。
画面に出る擬音は「読めなくていい」
アニメ版の大きな特徴が、画面に文字として出る擬音です。これがどういう位置づけだったのか。答えは予想外に割り切ったものでした。
「文字エフェクトは、その名の通りエフェクトのひとつとして考えているので、実は。読めなくていいやと思いながらのせてるんです」
鈴木さんも「効果音を補強するつもりで入れているというよりは、賑やかしなんですよね。効果音は普通にきっちり鳴ってるんで、正直なくても映像的には成立するんです」と補足しています。
では、なぜ入れるのか。鈴木さんの説明がすべてを言い表しています。「ディオとエリナがキスしている上には『ズキュウウウン』っていう文字が出てないと、なんか物足りないじゃないですか」。原作を読んだときの印象値を守るための処置でした。
スタンドの「見え方」は精神の強さを表していた
アニメでは、スタンドが透けて見えたり、はっきり見えたりします。この差に意味はあるのか。制作側は明確な解釈を持っていました。
「僕らは、精神性の強さがスタンドに表れるという解釈をしておりまして。気合の入っているときは100%見えているけど、やられたりするとちょっと薄くなってきたりとか」
アニメを見ていて「今スタンドが薄い」と感じたら、それは演出の気まぐれではありません。本体の状態を示しているということです。
また津田さんは、漫画とアニメの根本的な違いにも触れています。「マンガだと同じ場面でもスタンドや人間、どちらかを描いたり描かなかったりということが自由自在なわけですが、アニメは一定で時間が流れているので、絶対にいないといけない」。スタンドが攻撃していないあいだも画面に居続けなければならず、髪をなびかせたり淡く光らせたりして処理していたそうです。
スタンドの出現に法則がないのは、原作にないから
スタンドの登場の仕方は毎回違います。これも意図的でした。原作でも序盤はスタンドの設定が固まっておらず、当初は「幽波紋」と表記され、呼吸が荒くなると力が弱まるという波紋に近い扱いだった、と津田さんは指摘しています。
「出現の仕方も、一定の法則を作ってないので微調整が大変だったりしますし……一定の法則を作ることがもはや無理だな、と」
第1話では原作に合わせて煙を出し、第2話では普通に出す。そのつど選び直しているそうです。「『モリモリモリモリ』って出ないといけないところや、『ドキュゥゥゥゥン』って出ないといけないところもあったりする」。
そして津田さんは、原作の連載ペースにも驚嘆しています。「第2部が終わってから、1週も休まずそのまま第3部が続いてるんですよ? その時点で驚愕ですよ」。設定が固まりきらないまま走り続けたライブ感を、アニメでも残したかったと語っています。
ジョジョの奇妙な冒険の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ジョジョの奇妙な冒険 |
| 作者 | 荒木飛呂彦 |
| 掲載誌 | 週刊少年ジャンプ(集英社)1986年〜2004年/ウルトラジャンプ(集英社)2005年〜 |
| 部数 | 全シリーズ累計の全世界発行部数1億2000万部突破(2022年1月時点)。単行本は合計100巻超 |
| 作品テーマ | 「人間讃歌」。作者は「子ども向けに描いてはいない」とも述べている |
| 構成 | Part1〜Part9。Part1〜6とPart7以降は別の世界線 |
| 主人公の共通点 | ジョージ・ジョースター卿の血を引く一族で、いずれも「ジョジョ」という愛称を持つ |
| 副題について | 現在の副題はPart6の執筆時に後から付けられたもの。Part3の時点で付けたかったが、既存のジャンプ・コミックスとの整合性を理由に編集部から却下された |
| Part3以降の副題 | 主人公のスタンドと同様に、鉱物や自然界の4大元素が含まれている。作者が意図して入れたもの |
| アニメ版 | 2012年に初のTVアニメ化を発表。『スターダストクルセイダース』は2014年4月から放送 |
ジョジョの奇妙な冒険の全9部と2つの世界線
まず全体像を押さえます。Part7で世界線が切り替わることが、シリーズを読むうえでの最大の区切りです。
部の構成と舞台設定は作品情報として確認できます。「断絶」は読者の解釈ではなく設定です。
| 部 | 副題 | 舞台 |
|---|---|---|
| Part 1 | ファントムブラッド | 1888年のイギリス。ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーの抗争 |
| Part 2 | 戦闘潮流 | 1938年。ジョセフ・ジョースターと「柱の男」たち |
| Part 3 | スターダストクルセイダース | 1988年。空条承太郎がDIOの潜むエジプトを目指す |
| Part 4 | ダイヤモンドは砕けない | 1999年の日本・M県S市杜王町。東方仗助 |
| Part 5 | 黄金の風 | 2001年のイタリア・ネアポリス。ジョルノ・ジョバァーナ |
| Part 6 | ストーンオーシャン | 2011年のアメリカ・フロリダ州。空条徐倫 |
| Part 7 | スティール・ボール・ラン | 1890年のアメリカ。ここから別の世界線 |
| Part 8 | ジョジョリオン | 2011年の日本・M県S市紅葉区杜王町。東方定助 |
| Part 9 | The JOJOLands | アメリカ・ハワイ州オアフ島。ジョディオ・ジョースター |
Part7以降は、石仮面や波紋といったPart6以前の要素が基本的にリセットされ、スタンドだけが引き継がれています。そのスタンドも新たに定義し直されました。ジョースター家やツェペリ家、ディオも登場しますが、名称が同じだけで直接的なつながりはありません。
なおPart7『スティール・ボール・ラン』は、当初『ジョジョの奇妙な冒険』とは無関係な新作として扱われていました。2005年にウルトラジャンプへ移ってから、正式にPart7となっています。
作者自身が語っていること
定番の考察論点について、作者はすでにかなりのことを話しています。
以下はWikipedia「ジョジョの奇妙な冒険」にまとめられた作者の発言です。一次資料にあたって確認したものではないため、参考情報として扱ってください。
| 論点 | 作者の説明 |
|---|---|
| 世代交代はいつ決まったか | 第1部の連載を開始した時点で、すでに第3部までの構想ができていた。誰にも言わなかったが、『エデンの東』のように世代が変わっていく話を核にできたらいいと考えていた |
| なぜラスボスは時間系なのか | 「時間を支配できる奴がいたら無敵だろうな、どうやって主人公は勝つだろう、と思う」 |
| なぜ頭脳戦なのか | デビュー連載『魔少年ビーティー』が10回で打ち切られた際、最終回だけアンケートが好評だった。その回だけライバルが力ではなく頭脳で対抗する構図だったことがスリルとサスペンスを生んだのでは、と推測したのが出発点 |
| 何を目指して描き始めたか | 「当初から意識していたのは、これまで読んだことがない新しいストーリーを作ろうということ」 |
| 擬音はどこから来たか | ヘヴィメタルやホラー映画などから思いつく。擬音によって「引き込まれる感じが違う」 |
| ジョジョ立ちはどこから来たか | 20代で初めて行ったイタリア旅行でミケランジェロの作品に衝撃を受け、彫刻のように肉体を捻るポーズを漫画に取り入れたかった |
つまり「意志の継承」も「時間のラスボス」も、読者が発見した隠しテーマではありません。作者が意識してそう組んでいます。考察としての価値は、そこから先──なぜその設計が読者に効くのか──にあります。
まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)
ここから先は、作者や制作陣の発言では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
「人間讃歌」という言葉の射程
作品全体のテーマが「人間讃歌」であることは広く共有されていますが、それが具体的に何を指すのかを作者が定義した一次情報には、本記事の調査範囲でたどり着けませんでした。
筆者は、吸血鬼や柱の男のような「人間でないもの」を必ず対置している構造そのものが答えなのだと読んでいます。人間の何が優れているかを言葉で説明するかわりに、人間でないものを隣に置いて見せる。ただしこれは解釈です。
スタンド=「個性」のメタファーと言えるか
スタンドを個性や内面の可視化として読む考察は定番です。アニメ制作陣が「精神性の強さがスタンドに表れる」という解釈で作っていたことは確認できました。
ただしこれはアニメ版のスタッフの解釈であって、原作者がそう定義したという記録ではありません。アニメ版はその読み方で作られている、というのが正確なところです。原作の描写がそこまで一貫しているかは別の問題として残ります。
第9部はどこへ向かうのか
Part9『The JOJOLands』は、大富豪になるという野望を持つジョディオ・ジョースターを主人公に、ハワイ州オアフ島を舞台に進行中です。
Part7以降の世界線がどこで閉じるのか、Part8との関係がどうなるのかは、現時点では示されていません。連載中の作品について結論を出せることは限られています。ここは推測を書くより待つほうが誠実だと考えています。
どこで読める?
原作は週刊少年ジャンプ(Part1〜6)とウルトラジャンプ(Part7〜)で連載され、単行本は集英社から刊行されています。Part5までは単行本に副題が入っておらず部の区切りが巻をまたぐため、部ごとに読みたい場合は文庫版や廉価版のほうが扱いやすくなっています。
アニメ版はPart1から順次制作されており、各配信サービスで視聴できます。配信先は時期によって変わるため、最新の状況を確認してください。
よくある質問
「意志の継承」は後付けのテーマ?
違います。作者は第1部の連載を開始した時点ですでに第3部までの構想を持っており、『エデンの東』のように世代が変わっていく話を核にしたいと考えていたと語っています。
各部のラスボスが時間系なのはなぜ?
作者が「時間を支配できる奴がいたら無敵だろうな、どうやって主人公は勝つだろう、と思う」と答えています。傾向として意識されたものです。
第7部から世界が変わったというのは本当?
本当です。Part7以降はPart6までとは別の世界線で、石仮面や波紋はリセットされ、スタンドだけが引き継がれています。そのスタンドも定義し直されています。
アニメの画面に出る擬音は読むもの?
制作側は「読めなくていいやと思いながらのせてる」と語っています。効果音の補強ではなく、原作を読んだときの印象値を守るための視覚的なエフェクトです。
アニメでスタンドが薄く見えるときがあるのは?
意味があります。制作側は「精神性の強さがスタンドに表れる」という解釈を採っており、本体がやられていると薄くなるように作られています。
各部の副題はいつからある?
Part6の執筆時に後から付けられました。作者はPart3の時点で付けたかったものの、既存のジャンプ・コミックスとの整合性を理由に編集部から却下されたと記録されています。
まとめ
『ジョジョの奇妙な冒険』の考察でよく挙がる3つの論点は、すでに答えが出ています。世代交代は第1部の時点で第3部までの構想があったこと。各部のラスボスが時間系なのは「時間を支配できる奴がいたら無敵だろうな」という作者の関心によること。第7部以降の断絶は解釈ではなく設定であること。そのうえでアニメ版は、「荒木先生を科学する」という方針で作られていました。荒木さんが見た映画をなるべく見る。表面をなぞるのは原作を読めばできるから、その奥にあるものを知るには本人を知るしかない──ディレクターの津田尚克さんはそう説明しています。考察の面白さは、まだ誰も知らない秘密を掘り当てることではなく、作り手が実際に何をしたかを知ることのほうにあるのかもしれません。
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出典
- コミックナタリー TVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」特集 津田尚克×鈴木健一対談
- 同 4ページ目(スタンドの見え方・出現の法則)
- Wikipedia「ジョジョの奇妙な冒険」(部構成・世界線・作者の発言・連載データ)
引用元は末尾の出典欄に記載しました。引用は必要な範囲にとどめ、作品の画像は使用していません。©荒木飛呂彦/集英社
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