※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。
『PLUTO』の「PLUTO 読む順番」は、全8巻を1巻から順に。それだけです。よくある質問は「手塚治虫の『地上最大のロボット』を先に読むべきか」ですが、読まなくても成立します。むしろ知っておくと効くのは、この作品がどうやって生まれたかのほうです。浦沢直樹さんは5歳のときに『地上最大のロボット』を読み、そのとき感じた得体の知れない「切なさ」を一生かけて突き止めようとしていると語っています。そして浦沢さんがこの作品を描くことになったきっかけは、本人の何気ない一言でした。
📘 この記事でわかること
- 全8巻の読む順番と、原作『地上最大のロボット』を先に読むべきかどうか
- 浦沢直樹が「一生かけて突き止めようとしている」と語る“切なさ”とは何か
- リメイクの発端が浦沢自身の何気ない一言だったという経緯
- 手塚眞が一度は断り、のちに了承したときの条件
- 原作と違って刑事ロボット「ゲジヒト」の視点で描かれていること
- 作者が語っていないことと、読者の解釈の境目
📈 数字で見るPLUTO
PLUTOの読む順番
🔑 迷うところはほとんどありません
- 全8巻を1巻から順に読む。外伝も番外編もありません。2003年から2009年まで『ビッグコミックオリジナル』(小学館)で連載され、単行本8巻で完結しています。
- 手塚治虫『地上最大のロボット』は先に読まなくてよい。原作を知らなくても物語は成立します。読んでから入ると、浦沢版が誰の視点に立て替えたのかが分かるので、むしろ読んだあとに原作へ行くほうが発見が大きくなります。
- Netflixのアニメ版は原作8巻分をすべて描いている。1話60分の全8話で、2023年10月26日から独占配信されました。原作と同じ範囲なので、どちらから入っても構いません。
原作の『鉄腕アトム』ではアトムが主人公ですが、浦沢版は原作で脇役だったドイツの刑事ロボット「ゲジヒト」の視点で進みます。これを知らずに読み始めて「アトムがなかなか出てこない」と戸惑う人がいます。仕様です。
PLUTOについて浦沢直樹が語ったこと
浦沢直樹さんは、この作品について繰り返し同じ言葉を使っています。「切なさ」です。
以下は2023年、アニメ版に関する2つのイベント——AnimeJapan 2023のステージ(3月25日)と、世界最速ワールドプレミア(10月20日)——での発言からの引用です。
5歳のときの「切なさ」を、一生かけて突き止めている
浦沢さんが『地上最大のロボット』に出会ったのは1964年、5歳のときでした。生まれて初めて漫画で感動した作品がこれだった、と伝えられています。
AnimeJapan 2023のステージで、浦沢さんはそのときの感覚をこう振り返りました。
「「なんという切ない話なんだろう」と、5歳の浦沢少年が思ったわけです。その得体の知れない“切なさ”を、一生かかって突き止めている感じがしています」
この作品は、その解明作業そのものだということになります。リメイクという言葉から連想する「別解釈で描き直す」とは、動機が違います。
同じステージで浦沢さんは「手塚治虫さんは60年前に、この話を我々に提示してくれていた」と述べ、「60年経った今、世界はこのような状態である、まだこの作品が有効であるということが、僕の思っていた巨大な“切なさ”なんじゃないか」と続けています。
1962年のキューバ危機と、2003年のイラク戦争
ワールドプレミアの最後に、浦沢さんは観客へメッセージを送りました。この作品がどんな時代と結びついているかを、年号で示した発言です。
「私が『地上最大のロボット』を読んだのは1964年。1962年にはキューバ危機があり、また『PLUTO』を描き始めた2003年にはイラク戦争がありました」
「いつ核戦争になるかという時代で、この何とも言い表せない感情はなんだろうと、思ったんです。そして今の世界の状況を見て、そういった気持ちになっている方も大勢いらっしゃるかと思います」。
実際、作中の設定は連載開始当時のイラク戦争を反映したものになっています。「大量破壊ロボット製造禁止条約」を掲げる大国が、小国の保有を主張して調査団を送る——という導入は、当時のニュースをそのまま置き換えた形です。
「決して楽しいだけの話じゃありません」
そのうえで浦沢さんは、この作品をどう受け取ってほしいかをはっきり述べています。手塚治虫という作家の仕事についての評価も含んだ発言です。
「手塚先生は、「人間の命とはなんだ」というとても難しいテーマをエンタメにして皆さんに届け、みんなで考えようと提示してきました」
その前段で「『PLUTO』は決して楽しいだけの話じゃありません」と述べ、最後は「まずはエンタメとして楽しんでください」で締めています。
重いテーマを娯楽として成立させることが手塚の仕事だった、という読み方です。だから浦沢さんも、まずエンタメとして読めと言う。構えて読む必要はありません。
「僕の作品ってほぼモノローグを使っていなくて」
アニメの映像を初めて観たときの感想を問われたときの発言です。自作の書き方についての言及が含まれています。
「僕の作品ってほぼモノローグを使っていなくて。声優さんたちがセリフを言うときに、本当はこのキャラはこういう気持ちがあるんだなというのを演技で感じることができて大変感動しました」
心の声で説明しない。これは『PLUTO』を読むうえで実用的な情報です。登場人物が何を思っているかは、台詞と表情と間だけで書かれています。
ロボットの感情を扱う作品でこの制約を採るのは、かなり厳しい選択です。ゲジヒト役の藤真秀さんは、演技の方向について「人間かロボットかで振り切るのではなく、なんとも言えないところでその2つの要素を泳がすことで、切なさを出せないか」と探ったと語っています。
PLUTOの基本情報

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | PLUTO(プルートゥ) |
| 作者 | 浦沢直樹 |
| 原作 | 手塚治虫『鉄腕アトム』のエピソード「地上最大のロボット」 |
| 制作体制 | 監修:手塚眞/プロデューサー:長崎尚志/協力:手塚プロダクション |
| 掲載誌 | ビッグコミックオリジナル(小学館) |
| 連載期間 | 2003年〜2009年 |
| 巻数 | 全8巻 |
| 累計部数 | 1000万部突破(2023年2月時点) |
| 受賞 | 第9回手塚治虫文化賞マンガ大賞/平成17年度 第9回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞/第41回星雲賞コミック部門 |
| ランキング | 「このマンガがすごい!」2006年版オトコ編1位/「このマンガを読め!2005」1位 |
| 電子書籍 | 長く電子化されていなかったが、2022年10月28日から配信開始(浦沢作品の電子化プロジェクト第5弾) |
| アニメ | 2023年10月26日からNetflixで独占配信。1話60分の全8話で原作8巻分を描いた |
| 主なキャスト | ゲジヒト役:藤真秀/アトム役:日笠陽子/プルートゥ役:関俊彦/ウラン役:鈴木みのり |
PLUTOはどうやって実現したのか
「漫画の神様」の作品を別の漫画家が描くことは、それまでご法度とされていました。それがなぜ実現したのか。経緯がかなり具体的に残っています。
以下はWikipedia「PLUTO」の作品背景の項に記載されている経緯です。一次資料にあたって確認したものではないため、参考情報として扱ってください。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 前提 | 『鉄腕アトム』の作中設定でアトムは2003年4月7日生まれ。現実の2003年はアトム生誕記念の年で、各種イベントが催された |
| 発端 | 手塚プロダクションから相談を受けた浦沢が、軽い気持ちで「『地上最大のロボット』をリメイクするくらいの、気骨のある漫画家はいないもんかね」とこぼした |
| 結果 | 大それたことだと思いながらも、浦沢自身が描くことになった |
| 2002年冬 | 浦沢が手塚治虫の息子・手塚眞に許諾を求める。手塚は一度これを断る |
| 2003年3月28日 | その後の浦沢の熱心なラブコールに心を動かされ、手塚眞がリメイクを了承 |
| 了承の条件 | 手塚眞は「やるんだったら、浦沢さんの代表作になるようなものにしてください」と伝えた。単なるオマージュではなく浦沢作品として描くことを要望した |
| 2003年9月 | 『ビッグコミックオリジナル』で連載開始。『20世紀少年』と同じく長崎尚志と組んだ |
つまり浦沢さんは自分から手を挙げたわけではなく、自分の一言に引き受けさせられた形です。「気骨のある漫画家はいないもんかね」という言い方が、そのまま自分に返ってきました。
手塚眞さんはのちにAnimeJapanのステージで、この作品を「紛れもなく本物の名作。よくぞ作ってくださった」と評しています。浦沢さんは「上のほうから『ちょっとそれは描き方が違うよ』ってずっと言ってくるんですよ(笑)」と冗談めかして応じました。
原作との違いは「誰の目で見るか」
浦沢版がどこを変えたのかを押さえておくと、読み方が変わります。
視点人物の入れ替えは作品の構造として確認できる事実です。
| 項目 | 手塚治虫『地上最大のロボット』 | 浦沢直樹『PLUTO』 |
|---|---|---|
| 主人公 | 少年ロボット「アトム」 | 原作で脇役だったドイツの刑事ロボット「ゲジヒト」の視点で物語が進む |
| ジャンル | 少年向けSF | 人間と高性能ロボットが完全に共生する近未来を舞台にしたSFサスペンスドラマ |
| 時代背景 | 1964年に発表 | 連載開始当時のイラク戦争を反映した設定 |
| 体制 | 手塚治虫による単独執筆 | 監修に手塚眞、プロデューサーに長崎尚志(『20世紀少年』と同じ布陣) |
| 遊び | — | 『鉄腕アトム』の他の回や他の手塚作品のキャラクターに似た人物が登場。喫茶店の名が「TOKIWA」など |
刑事が捜査する話になっている——これが最大の改変です。連続殺人事件を追う刑事の目を通すことで、「ロボットに心はあるのか」という問いが、抽象論ではなく捜査の対象になります。
だからこそ、原作を先に読まなくても入れます。ミステリとして成立しているからです。
まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)
ここから先は、作者の発言では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
「切なさ」の正体は結局何なのか
浦沢さんは「一生かかって突き止めている」と言い、「まだこの作品が有効であるということが、僕の思っていた巨大な“切なさ”なんじゃないか」とも述べています。
別のインタビューでは、その正体が「徐々にわかってくる」として、憎しみ合って勝利することや、戦って勝ち取ることの虚しさを挙げています(GIGAZINE)。ただしそこでも最後は推測の形で締めくくっていて、本人も答えを言い切ってはいません。読者が「これが答えだ」と決めるのは、作者より先を行くことになります。
筆者としては、この言い方自体が作品の設計だと読んでいます。定義できない感情を定義しないまま8巻かけて描く、というのがこの作品の形です。ただしこれは解釈です。
原作を読むタイミングはいつがいいのか
「先に読むべきか」という質問に公式の答えはありません。
筆者は『PLUTO』を読み終えてから原作へをすすめます。理由は単純で、浦沢版が誰の視点に立て替えたかを知っていると、原作の短さと密度に驚けるからです。逆順だと「原作のほうが短い」という感想で終わりかねません。ただしこれは好みの問題でもあります。
実写映画化はどうなったのか
2010年に実写映画版の制作が発表されていますが、その後の具体的な進展については、本記事の調査範囲で確認できる情報にたどり着けませんでした。
一方でアニメ化は、浦沢さんによれば企画・制作から10年かかっています。当初は劇場映画の2時間サイズと伝えられ、「全8巻が入るわけもないと思い、丸山(正雄)プロデューサーと話し合いながら、今回の形に収まりました」。1話60分×8話という形はNetflixというメディアがあってはじめて可能になったと本人が述べています。
どこで読める?
紙のコミックスはビッグコミックス(小学館)から全8巻が刊行されています。完結済みなので全巻セットでも手に入ります。
電子版は長く配信されていませんでしたが、2022年10月28日から浦沢作品の電子化プロジェクトの一環として配信されています。
アニメはNetflixで独占配信されました。1話60分の全8話で、原作8巻分がすべて描かれています。
よくある質問
PLUTOの読む順番は?
全8巻を1巻から順に読むだけです。外伝も番外編もありません。
手塚治虫の原作を先に読むべき?
読まなくても成立します。むしろ『PLUTO』を読み終えてから「地上最大のロボット」へ進むほうが、視点の入れ替えに気づけて面白くなります。
原作とどこが違う?
最大の違いは視点です。手塚治虫版は少年ロボット「アトム」が主人公ですが、浦沢版は原作で脇役だったドイツの刑事ロボット「ゲジヒト」の視点で描かれます。
なぜ浦沢直樹がリメイクすることになった?
手塚プロダクションから相談を受けた際、浦沢さんが軽い気持ちで「『地上最大のロボット』をリメイクするくらいの、気骨のある漫画家はいないもんかね」とこぼしたことがきっかけだったと記録されています。
アニメは原作のどこまで?
全8巻分すべてです。1話60分の全8話で、2023年10月26日からNetflixで独占配信されました。
どのくらい評価されている作品?
第9回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第9回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第41回星雲賞コミック部門を受賞。「このマンガがすごい!」2006年版オトコ編で1位、累計発行部数は2023年2月時点で1000万部を突破しています。
まとめ
『PLUTO』の読む順番は全8巻を1巻から順に、それだけです。手塚治虫の『地上最大のロボット』を先に読む必要はありません。浦沢直樹さんは5歳でその原作に出会い、「『なんという切ない話なんだろう』と、5歳の浦沢少年が思ったわけです。その得体の知れない“切なさ”を、一生かかって突き止めている感じがしています」と語っています。リメイクの発端は、手塚プロダクションからの相談に対して浦沢さんが「『地上最大のロボット』をリメイクするくらいの、気骨のある漫画家はいないもんかね」とこぼしたこと。手塚眞さんは一度断り、のちに「やるんだったら、浦沢さんの代表作になるようなものにしてください」という条件で了承しました。原作で脇役だった刑事ロボット「ゲジヒト」の視点に立て替えたことで、この作品はミステリとして成立しています。
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出典
- コミックナタリー「『PLUTO』浦沢直樹、手塚治虫から受け取ったバトンを次の時代へアニメでつなぐ」(AnimeJapan 2023レポート、2023年3月25日)
- コミックナタリー「『PLUTO』は楽しいだけの物語ではない、浦沢直樹が作品へ込めた思いを語る」(ワールドプレミア レポート、2023年10月20日)
- Wikipedia「PLUTO」(連載データ・作品背景・受賞・原作との違い)
本記事の画像は公式サイト・公式YouTubeが公開したものを、出典を示して引用しています。文章の引用も必要な範囲にとどめました。©浦沢直樹・手塚治虫/手塚プロダクション/小学館
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