※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。
『王様ランキング』の「王様ランキング 考察」を、作者・十日草輔さん自身が語った言葉をもとに組み立てました。「なぜこの作品は泣けるのか」という問いについて、ネット上には読者側の解釈がたくさんあります。ただ、コミックナタリーが行った十日さんへのインタビューを読むと、答えの一部はもっと直接的なところにありました。作者自身が子どもの頃から耳が悪く、そのコンプレックスがボッジの描写に出ていると本人が語っているのです。この記事では、作者が語ったこと・確認できること・まだ分からないことの3つを分けて書きます。
📘 この記事でわかること
- 作者・十日草輔さん自身が難聴だと語っていること
- ボッジを「しゃべれない主人公」にした理由(作者の説明)
- 作者が泣きながら描いたと明かしているエピソード
- 「悪人が出てこない」という印象の正体
- 非商業のWeb連載から始まった経緯と、確認できる刊行・アニメデータ
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王様ランキングはなぜ泣けるのか──読み解く3つの鍵
🔑 作者の発言から分かること
- 作者自身が子どもの頃から耳が悪い。ボッジの聴こえない描写について「自分のそういうコンプレックスの一面が見えるのかも」と語っています。
- カゲの回想は、作者が泣きながら描いた。第11話の幼いカゲが旅立つ場面について、本人がそう明かしています。
- 「悪人がいない」のは作品全体の方針ではない。ボッス王の家来に限った前提で、「ボッス国を離れたら悪人がいっぱい出てきます」と語られています。
以下、鍵かっこ内は出典元での発言をそのまま引いたものです。リンク先で全文を確認できます。
王様ランキングの作者・十日草輔が語ったこと
以下の発言は、単行本1・2巻の発売に合わせてコミックナタリーが行った十日草輔さんへのメールインタビュー(2019年3月14日公開)からの引用です。読者からTwitterで募集した質問に本人が答える形式で、作品の核心にあたる話が多く出ています。
作者自身が、子どもの頃から耳が悪かった
中等度難聴の読者から「ボッジの耳が聞こえない描写がリアルで細かい。お近くに難聴者がいらっしゃるのでしょうか」という質問が寄せられました。答えは、身近にいるのではなく本人でした。
「実は私も子供の頃から耳が悪くて、いつも検査に引っ掛かっていたのですが、うまくごまかしていました」
十日さんはこのあと、電車内で声が大きいと注意されたこと、会社で周囲の声が聞き取れずイライラしたこと、そして「一番困ったのが電話でした」と具体的に振り返っています。何度も聞き直すのが恥ずかしかった、とも。
そのうえで、描写をリアルだと言われることについて「自分のそういうコンプレックスの一面が見えるのかもと思っちゃいます」と述べています。ボッジの聴こえなさは、取材して組み立てた設定ではなく、作者自身の経験から出てきたものだということです。
「なぜこの作品は泣けるのか」という問いに対して、これはかなり直接的な答えになっていると思います。読者が感じ取っている手触りの細かさには、根拠があったわけです。
なお手話については「まったくわかりませんのでネットで調べて描いています」とも語っていて、経験がある部分とない部分をはっきり分けて答えているのが印象的です。
しゃべれない主人公は、ハンデではなく利点だった
「耳が聞こえず、言葉が話せない」主人公は、マンガとして描きにくいのではないか——そんな質問に対する答えが、この作品の構造をよく説明しています。
「マンガは読む人がページをめくれるから、1つのコマからいろんなことを想像して予想できる楽しみがある」
現実では相手の表情から心理を読むのは難しい(じっと見られないから)けれど、マンガなら読者が1コマを好きなだけ見ていられる——という趣旨の説明です。だから主人公がしゃべれなくても行動で伝わるし、むしろ読者が想像する余地が生まれる。結果として「難しい設定というかハンデにはなりえない」と結論づけています。
つまりボッジの無口さは、感動を狙った演出というよりマンガという形式の特性を踏まえた設計だということになります。読者が勝手にボッジの気持ちを読み取ってしまう仕掛けが、はじめから組み込まれていたわけです。
十日さんは「私自身がものすごいおしゃべりなので、無口な人に憧れもあると思います」とも付け加えています。
カゲの回想は、泣きながら描いていた
「いちばん『頑張れ!』と思ったシーンは?」という質問への答えです。
「カゲの幼い回想では涙ボロボロ流しながら描きました。めちゃくちゃ感情移入してしまったので、思い入れも強かったんですね」
指しているのは第11話、幼いカゲがひとり旅立つ場面です。読者の多くが「泣いた」と挙げる場面と、作者が泣きながら描いた場面が一致しているというのは、なかなかない情報だと思います。
感動の理由を読者側だけで探すと「演出がうまい」「構成が巧み」といった話になりがちですが、この発言を踏まえると、描き手の感情がそのまま乗っていたという単純な説明も成り立ちます。
「悪人がいない」のは、ボッス国の中だけの話だった
この作品の感想でよく見るのが「悪人が出てこない」という評価です。ところが作者の説明は少し違います。
「ただボッスの家来には、悪人はいないというのが最初からの前提でした」
「悪人がいないというのは難しいのでは」という問いに対して、十日さんは「それはあまり意識したことないのです」と前置きしたうえでこう答えています。さらに「ボッスは人の闇を知っていますので、家来にするとき、人を見極めて決めていました。ですので、ボッス国を離れたら悪人がいっぱい出てきます」と続けています。
つまり「悪人が出てこない世界」ではなく、「ボッス王が人を見極めて選んだ結果、その国の中に悪人がいない」という設定上の理由があったということです。この発言は2019年3月のもので、実際にその後の物語は国の外へ広がっていきました。
読者が感じていた「優しい世界」の正体が、世界観そのものではなく一人の王の人選だった——という読み替えは、この作品の見え方を変えると思います。
「これは練習」として始まった作品だった
「マンガを描き始めるにあたって「これは練習」と位置付けて、続けることを第一としました」
反響がなかったら連載をやめていたか、という質問への答えです。十日さんは「結末も考えていなかったですし、『最後まで描き切る』というような決心はしてなかったです。あくまで軽い気持ちを大事にしていたんです」と語り、それを「逃げ道」だったとも表現しています。
そして「バズったのは描き続けて1年半後ぐらいだったと思います。本当におまけなんです」と。壮大な構想から始まった作品ではなく、続けることだけを決めて描かれた作品だったことになります。
作品の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | 王様ランキング |
| 作者 | 十日草輔(とおか そうすけ) |
| 出版社・レーベル | KADOKAWA/ビームコミックス |
| 連載 | 第一部 2017年5月20日〜2021年1月2日/第二部 2021年5月8日〜2023年4月1日/2024年12月31日〜 |
| 巻数 | 既刊23巻(23巻は2026年10月9日発売。KADOKAWA) |
| 単行本化 | 2019年2月12日に1・2巻が同時発売 |
| 累計発行部数 | 220万部(2023年6月時点) |
| アニメ | TVアニメ 全23話(2021年10月15日〜2022年3月25日)/『勇気の宝箱』2023年4月〜 |
| 劇場版 | 2023年6月23日に製作決定が発表 |
非商業のWeb連載から始まった経緯
この作品が特異なのは、出発点が商業誌ではなかったことです。マンガ投稿サイトでの非商業連載から始まり、SNSでの話題を経て書籍化されました。
以下は報道と出版社情報で確認できる内容です。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2017年5月20日 | 第一部の連載が始まる(マンガ投稿サイト・マンガハックなどで公開) |
| 2018年 | 「次にくるマンガ大賞 2018」Webマンガ部門にノミネート |
| 2019年2月12日 | KADOKAWAより単行本1・2巻が同時発売 |
| 2019年3月14日 | コミックナタリーが作者インタビューを公開(本記事の引用元) |
| 2021年10月15日 | TVアニメ放送開始(全23話・2022年3月25日まで) |
| 2023年4月 | 『王様ランキング 勇気の宝箱』放送 |
| 2023年6月23日 | 劇場版の製作決定が発表 |
十日さんは「バズったのは描き続けて1年半後ぐらい」と語っています。連載開始が2017年5月なので、話題になったのは2018年の終わりごろ。1年半のあいだ、ほとんど反応のないまま描き続けていたことになります。
作者が明かした小ネタ
作品の読み方に直接関わるわけではありませんが、知っていると見え方が変わる話がいくつか出ています。
以下はすべて同じインタビューで語られた内容です。
| 話題 | 作者の説明 |
|---|---|
| キャラクターの名前の由来 | 「そのキャラを象徴するところをもじって決めています」。ソードマスターだからドーマス、宰相(総理)だからソリー、サンデオは“おじさん” |
| 登場人物の年齢 | 決めていない。「読んでくれた方のご想像にお任せしています」「年齢を決めてしまうといろいろと自由が利かなくなる」 |
| 実在のモデル | 「実在の人を思いながら描いた記憶はありませんのでいないと思います」 |
| 絵柄が変わった理由 | 「自分が描きやすい様に自然と変わっていく」。ボッジの髪型がもこもこになったのは、途中で線を止めて頭の形を調整できるため |
| ボッジとカゲの原型 | もともと絵本の構想。当時カゲは盗賊の設定で、2人は友情ではなく「完全な主従関係」だった |
とくに年齢を決めていないという点は、この作品の読まれ方に関わってきます。ボッジが何歳なのかを作者が確定させていないので、読者がそれぞれの距離感で読める構造になっています。
まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)
ここから先は、作者の発言や公式資料では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
「泣ける」の理由を、どこまで作者に帰せるか
作者自身の難聴という経験、そして泣きながら描いたという告白。この2つは「なぜ泣けるのか」を考えるうえで強い材料です。ただし、それだけで説明がつくわけではありません。
たとえば、ボッジが泣かずに笑ってみせる場面の積み重ねや、周囲の人物が彼を見る目が少しずつ変わっていく描き方。こうした構成の効果については、作者は語っていません。ここは読者それぞれの読み取りになります。
第二部以降をどう位置づけるか
本記事で引用したインタビューは2019年3月のもので、第一部の序盤にあたる時期です。第二部(2021年5月〜2023年4月)やその後の展開について、同じ密度で作者が語った一次情報は、本記事の調査範囲では見つけられませんでした。
「ボッス国を離れたら悪人がいっぱい出てきます」という予告が、その後どう展開したか——ここを作者の発言と突き合わせて論じるには、新しい一次情報が必要です。見つかり次第、この記事に追記します。
どこで読める?
紙のコミックスはビームコミックス(KADOKAWA)から既刊23巻が発売されています。
電子版は主要な電子書店で配信されています。アニメは各配信サービスで視聴できます。
よくある質問
ボッジの耳が聞こえない描写がリアルなのはなぜ?
作者の十日草輔さん自身が子どもの頃から耳が悪く、インタビューで「自分のそういうコンプレックスの一面が見えるのかも」と語っています。ただし手話については「まったくわかりません」として、調べて描いていると述べています。
作者が泣きながら描いた場面はある?
あります。第11話の、幼いカゲがひとり旅立つ場面です。「涙ボロボロ流しながら描きました」と語っています。
この作品に悪人が出てこないのはなぜ?
作品全体の方針ではなく、ボッス王が人を見極めて家来を選んだという設定によるものです。作者は「ボッス国を離れたら悪人がいっぱい出てきます」と語っています。
登場人物の年齢設定は?
決められていません。作者は「読んでくれた方のご想像にお任せしています」としています。
絵柄が途中で変わったのはなぜ?
作者が描きやすいように自然と変わったためです。ボッジの髪型がもこもこになったのも、途中で線を止めて頭の形を調整できるからだと説明されています。
何巻まで出ている?
既刊23巻です(23巻は2026年10月9日発売)。KADOKAWAのビームコミックスから発売されています。
まとめ
『王様ランキング』が「なぜ泣けるのか」を考えるとき、作者・十日草輔さんの発言が強い手がかりになります。十日さんは子どもの頃から耳が悪かったと語っており、ボッジの描写について「自分のコンプレックスの一面が見えるのかも」と述べています。読者の多くが泣いたと挙げる第11話のカゲの回想は、作者自身が「涙ボロボロ流しながら描きました」と明かした場面でもあります。また「悪人がいない」という印象は世界観ではなく、ボッス王が家来を見極めて選んだという設定によるものでした。
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出典
本文の引用はいずれも出典付きで、範囲を絞っています。画像の掲載はありません。©十日草輔/KADOKAWA
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