※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。
『カウボーイビバップ』の「カウボーイビバップ 見る順」は単純です。Session #1 から #26 まで順に見て、そのあとで劇場版『天国の扉』。公開順ならそれだけです(作中の時系列では、劇場版は第22話と第23話の間)。ただ、この作品には順番の話をややこしくしてきた事情があります。1998年の地上波放送では、全26話のうち12話しか流れませんでした。しかも第1話が飛ばされ、第2話から始まっています。「昔テレビで見た」という記憶と、いま配信で見られるものは別物です。この記事では正しい順番を先に示したうえで、渡辺信一郎監督が放送20周年のイベントで明かした制作の裏側を紹介します。社内試写での反応は「渋すぎる。売れないよ、これ」でした。
📘 この記事でわかること
- Session #1〜#26 →劇場版、という迷いようのない視聴順
- 1998年の地上波では26話中12話しか放送されず、第1話が飛ばされていたこと
- 監督が語った「売れないよ、これ」という社内の反応と、制作中止寸前だった経緯
- 放送枠が空いたのは「別のアニメの制作が間に合わなかったから」だという証言
- 菅野よう子の作曲を監督が「アニメ史上こんなめちゃくちゃな音楽の作り方をしたアニメはない」と評したこと
- 作品の評価として確認できることと、視聴者の解釈の境目
📈 数字で見るカウボーイビバップ
カウボーイビバップの見る順
🔑 この順番で問題ありません
- TVシリーズ全26話を Session #1 から順に見る。一話完結が基本ですが、スパイクの過去に関わる回は連続しています。順番を入れ替える理由はありません。
- 劇場版『カウボーイビバップ 天国の扉』を見る。TVシリーズの登場人物と関係性を前提にした作品なので、全26話のあとに。制作はTVシリーズのスタッフが独立して設立したボンズです。
- 「昔テレビで見た」記憶は基準にしない。地上波では26話中12話しか放送されず、しかも第1話が抜けていました。当時のテレビ放送だけで見ていた人は、実質的に半分も見ていません。
配信サービスで扱われているのは全26話版です。地上波版のような欠番や自主規制によるカットはありません。
カウボーイビバップの監督が語ったこと
この作品の制作の裏側について、渡辺信一郎監督が公の場で具体的に話した記録があります。2018年8月18日、東京・立川シネマシティで開かれた「カウボーイビバップ放送20周年記念ナイツ」のトークショーです。
音楽プロデューサーの佐々木史朗さん、脚本の佐藤大さんが同席し、コミックナタリーがイベントレポートとして記事にしています。以下はそこからの引用です。
社内試写の反応は「こんなアニメは売れない」だった
いまでこそ名作として扱われる作品ですが、放送前の評価は低かったといいます。司会の佐藤さんが「放送が始まるまで内々での評価が低かった」と振り返ったのに対して、監督は作品の“ターニングポイント”として次のような出来事を挙げました。
企画中にサンライズ社内で同時に動いていた別作品と一緒にさせられそうになったこと。スポンサーに降りられ、危うく制作中止に追い込まれそうになったこと。そして──
「サンライズ内で行われた1話の上映会後に「こんなアニメは売れない」と言われながらも内容を一切変えなかった」
ここで重要なのは後半です。売れないと言われても、内容を一切変えなかった。この作品の完成度は、社内評価を無視して押し通した結果ということになります。
なお、ジャズを全面に出すことにも反対はありました。サントラを出すレコード会社からは「ジャズなんて日本で何枚売れてると思います?」と言われ、菅野よう子さん自身も最初は売れないと考えていたと伝えられています。
放送枠が空いたのは「別のアニメが間に合わなかったから」
地上波の放送枠はなかなか決まらず、オンエアに至るまで2年近くを要しました。ではなぜ最終的に枠が取れたのか。監督はイベントで、その理由まで明かしています。
「とあるアニメの制作が間に合わなかったため、急遽本作がテレビ東京で放送されることになった」
急遽の1クール枠だったため、全26話のうち12話(Session #2、#3、#7〜15、#18)+総集編という変則的な形で放送されました。第1話が抜けているので、地上波の初回は第2話から始まり、冒頭に世界観の説明テロップが流れています。
つまり「地上波で見た記憶」は、この作品の半分以下です。いま配信で全26話を通して見ると、当時テレビで見ていた人でもまったく違う印象を受けるはずです。
菅野よう子は「頼んでない曲」を送り続けてきた
この作品の音楽は菅野よう子さんが作曲し、シートベルツ(THE SEATBELTS)が演奏しています。監督は打ち合わせの様子をこう語りました。
メニュー表を書いて発注しても、頼んでいない曲がどんどん上がってくる。監督はその状況をこう表現しています。
「アニメ史上、こんなめちゃくちゃな音楽の作り方をしたアニメはない(笑)」
しかも監督は、メニューになかった楽曲をアニメで使い切ろうとしたこと、菅野さんが作った曲を使うためにシーンを増やしたことがあると明かしています。
「音楽に映像を合わせた」場面が実際に存在する、ということです。この作品の音と画のはまり方が異常なのは、発注と納品の順序が逆転していたからでもありました。
ジェット・ブラック役・石塚運昇への言葉
この20周年イベントは、ジェット・ブラック役の石塚運昇さんの訃報が伝えられた翌日に開かれました。監督は「昨日の今日なので、まだ心の整理がつかない」と述べ、登壇者3人で献杯を捧げています。
監督は自作で一度メインキャラクターを演じてもらった声優に、ほかの作品でメインキャラクターを頼まないことにしているといい、石塚さんはその唯一の例外でした。「代わりがいない。これからどうすればいいのか」と語ったうえで、会場にこう伝えています。
「今日観る人は運昇さんの演技を観てください」
はじめて見る人にも、見返す人にも、これ以上の案内はないと思います。ジェットの声を意識して聞くだけで、この作品の印象は変わります。
「自分の過去作では孤高な主人公が多い」という自己分析
もうひとつ、別の作品のインタビューからの引用です。2019年、『キャロル&チューズデイ』の特集で、監督は主人公を2人にした理由をこう説明しました。共同で何かを作る話に挑戦したかった、と。その文脈で、自分の作風についても触れています。
「どっちかというと自分の過去作では孤高な主人公が多くて、そのほうが描きやすいんですけど」
スパイク・スピーゲルを「孤高な主人公」と呼ぶかどうかは読み手次第ですが、監督自身が自分の傾向をそう認識している、という事実は押さえておいていいと思います。
同じインタビューで監督は「最初の計画通りに作るより常にアドリブを活かしたいと思ってる」とも語っています。菅野さんの曲に合わせてシーンを増やした話と、同じ姿勢です。
カウボーイビバップの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | カウボーイビバップ(Cowboy Bebop) |
| 監督 | 渡辺信一郎 |
| アニメーション制作 | サンライズ(第2スタジオ)/劇場版はボンズ |
| 音楽 | 菅野よう子、演奏はシートベルツ(THE SEATBELTS) |
| キャラクターデザイン | 川元利浩 |
| 話数 | 全26話(Session #1〜#26) |
| 地上波放送 | 1998年4月〜6月、テレビ東京系6局ネットで金曜18:00〜18:30。全26話中12話+総集編のみ |
| 全話放送 | 1998年10月〜1999年4月、WOWOW |
| 劇場版 | 『カウボーイビバップ 天国の扉』2001年9月公開 |
| 受賞 | 第3回アニメーション神戸 作品賞・テレビ部門(1998年11月)/第31回星雲賞メディア部門(2000年)/サントラ第1弾が第13回日本ゴールドディスク大賞アニメーション・アルバム・オブ・ザ・イヤー |
| 舞台 | 2071年の太陽系。火星を中心に、宇宙船ビバップ号で旅する賞金稼ぎたちの物語 |
地上波で流れなかった14話
1998年4月から6月にかけての地上波放送で流れたのは、次の12話と総集編だけでした。
地上波放送の話数構成は記録として残っています。「テレビで全部見た」という記憶は、事実としては成立しません。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 放送された話 | Session #2、#3、#7〜#15、#18 の計12話 |
| 放送されなかった話 | Session #1、#4、#5、#6、#16、#17、#19〜#26 の計14話 |
| 最終回として流れたもの | 総集編「よせあつめブルース」 |
| 放送枠 | テレビ東京系6局ネット、金曜18:00〜18:30(1998年4月〜6月) |
| 表記 | 各話冒頭に「Session #○○」という本来の話数と、「第〇回」という地上波の話数が併記された |
| 自主規制 | 暴力表現・性的表現・光の明滅が修正またはカットされた |
第1話が放送されなかったため、地上波の1回目はSession #2から始まり、冒頭に世界観を説明するテロップが流れました。総集編「よせあつめブルース」は、こうした規制やカットへの抗議を登場人物の独白として吐露した内容で、通常の総集編とは性格が異なります。
この事情を知らずに「昔テレビで見たけど途中でよく分からなくなった」という人は少なくないはずです。作品の問題ではありませんでした。
企画の発端は「宇宙船のプラモデルが売れるアニメ」
20周年イベントで語られた「売れないよ、これ」という反応は、企画の出自を知るとより腑に落ちます。
以下はWikipedia「カウボーイビバップ」の企画・制作の項に記載されている経緯です。監督の発言として直接確認したものではないため、参考情報として扱ってください。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 発注元の要望 | 『スター・ウォーズ』新3部作による宇宙船ブームを見込んだバンダイホビー事業部から「宇宙船のプラモデル展開ができるアニメ」というオファー |
| 監督の発想 | プロデューサーの南雅彦に「何か企画はないか」と聞かれ、アメリカのバウンティハンター稼業をヒントに近未来の宇宙を舞台とする無国籍アクションをその場で着想 |
| コンセプト | スペースオペラならぬ「スペースジャズ」 |
| 企画タイトル | 「流れ星ビバップ!」、次いで「シューティングスター・ビバップ」 |
| スポンサーの反応 | 「これじゃ宇宙船売れないから」と降板。バンダイビジュアルの協力で放送にこぎつけた |
| 結果 | 玩具収入が見込めない分、音楽CDと映像パッケージでの回収計画が組まれ、ソフト関連がヒット |
プラモデルを売るための企画から始まって、プラモデルが売れそうにない作品ができあがり、それでも内容を変えずに押し通した。この作品の成り立ちは、その一点に尽きます。
まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)
ここから先は、監督の発言では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
ラストをどう受け取るか
最終話の解釈は、この作品でもっとも議論されてきた点です。ただ、監督がその解釈を一つに定めた一次情報には、本記事の調査範囲でたどり着けませんでした。
監督は「毎回20分の映画を作っているつもりでした」と語っており、各話を独立した短編として設計していたことは伝えられています。最終話もまた一本の短編として閉じていて、続きを前提にしていないと筆者は読んでいますが、これは解釈です。
劇場版はTVシリーズのどの時点の話なのか
劇場版『天国の扉』は独立した事件を描いた一本で、公式サイトではTVシリーズ第22話と第23話の間に位置する作品と説明されています(カウボーイビバップ公式)。
登場人物の関係性はTVシリーズを前提にしているので、全26話を見終えてから見るのがいちばん安全です。時系列にこだわるなら、Session #22 のあとに劇場版を挟み、#23 へ進む見方もできます。
「ルパン三世に似ている」という評について
放送当時、この作品は『ルパン三世』に似ていると言われました。監督自身は、むしろ次回予告のナレーションを含めて松田優作主演のドラマ『探偵物語』に近いと述べたと伝えられています。
どちらの系譜で見るかによって、この作品の手触りはかなり変わります。ただし、どの系譜に置くのが正しいかという問題ではありません。監督が挙げた参照先を知っておくと、見方が一つ増える、という程度に受け取るのがよさそうです。
どこで読める?
TVシリーズ全26話と劇場版は、各配信サービスで扱われています。配信先は時期によって変わるため、視聴前に最新の状況を確認してください。配信されているのは全26話版で、地上波のような欠番やカットはありません。
音楽は菅野よう子とシートベルツによるサウンドトラックが複数枚出ています。作品を見たあとに聴くと、どの曲がどの場面だったか思い出せるはずです。
よくある質問
カウボーイビバップの見る順は?
Session #1 から #26 まで順に見て、そのあとで劇場版『天国の扉』です。一話完結が基本ですが、順番を入れ替える理由はありません。
劇場版はいつ見ればいい?
TVシリーズ全26話を見終えてからです。登場人物の関係性がTVシリーズを前提にしているため、先に見ると人物像がつかめません。
昔テレビで見たけれど全部見たことになる?
なりません。1998年の地上波では全26話のうち12話(Session #2、#3、#7〜15、#18)+総集編しか放送されず、第1話も含めて14話が流れませんでした。
なぜ地上波では飛び飛びの放送だったの?
地上波の枠がなかなか決まらず、別のアニメの制作が間に合わなかったことで急遽1クールの枠が空いたためです。渡辺信一郎監督が放送20周年のイベントで明かしています。
音楽が印象に残るのはなぜ?
菅野よう子が発注していない曲まで大量に納品し、その曲を使うためにシーンを増やしたことがあると監督が語っています。音に映像を合わせた場面が実際に存在します。
何話から面白くなる?
一話完結なので、どこから見ても一定の完成度があります。ただしスパイクの過去に関わる回は連続しているので、順番に見るのがおすすめです。
まとめ
『カウボーイビバップ』の見る順は「Session #1〜#26 → 劇場版『天国の扉』」の一本道です。迷う要素はありません。ただし「昔テレビで見た」という記憶だけは当てになりません。1998年の地上波では26話中12話しか放送されず、第1話すら飛ばされていました。渡辺信一郎監督は放送20周年のイベントで、社内試写後に「こんなアニメは売れない」と言われながら内容を一切変えなかったこと、スポンサーに降りられて制作中止寸前だったこと、別のアニメが間に合わなかったおかげで放送枠が空いたことを明かしています。菅野よう子については「アニメ史上、こんなめちゃくちゃな音楽の作り方をしたアニメはない」とも。作られ方を知ってから見ると、一話ごとの密度の理由が少し分かります。
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出典
- コミックナタリー「『カウボーイビバップ』“極上音響上映”、渡辺信一郎監督「運昇さんの演技を観て」」(放送20周年記念ナイツ イベントレポート)
- コミックナタリー「キャロル&チューズデイ」特集 総監督・渡辺信一郎インタビュー
- Wikipedia「カウボーイビバップ」(放送データ・地上波の話数構成・企画の経緯・受賞)
引用元は末尾の出典欄に記載しました。引用は必要な範囲にとどめ、作品の画像は使用していません。©SUNRISE / BONES・Hajime Yatate・Shinichiro Watanabe
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