※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。
『幽☆遊☆白書』のアニメを先に見た人が原作を読むと、まず戸惑うのが蔵馬と飛影がなかなか出てこないことです。原作では3巻まで登場しません。アニメでは6話から出ています。この差には、はっきりした理由がありました。阿部記之監督は「当たるかわからないから一番いいところを早くやろう」という当時の考え方だったと明かしています。この記事では、監督と幽助役・佐々木望さんの対談、そして作者の冨樫義博さんが語った「半ば私のわがままで止めた」という連載終了の経緯から、この作品の作られ方を読み解きます。
📘 この記事でわかること
- アニメが蔵馬と飛影を6話で出した理由についての監督の説明
- アニメ終盤に原作にない戦いが入っている理由
- 幽助役が「原作を読まないようにしていた」と語る理由
- 作者が「半ば私のわがままで止めた」と書いた連載終了の経緯
- 全19巻の編の区切りと、話数カウントが「act.」であること
- 作り手が語っていないことと、読者の解釈の境目
📈 数字で見る幽☆遊☆白書
幽☆遊☆白書のアニメと原作の差は、どこから来たのか
🔑 監督が語った3つの判断
- 序盤を短くして、蔵馬と飛影を早く出した。阿部記之監督は「当時アニメを作るときって、当たるかわからないから一番いいところを早くやろうっていう話が出たりしていた」と説明しています。原作で3巻まで出ない2人が、アニメでは6話から登場します。
- 終盤に原作にない戦いを足した。原作の連載が終わりそうだという話は制作側も聞いていたものの、アニメを続けるかは未定でした。「このままずっと戦っていくということもあり得るかもしれない」と考えて、蔵馬と時雨、幽助と黄泉の戦いを盛り込んだといいます。
- 結果的には原作と同じところで終わった。「プロデューサーの判断で、マンガと同じように終わろうという話になった」。足した戦いはそのまま残りました。
以下の引用は、2018年の「幽☆遊☆白書 25th Anniversary Blu-ray BOX 魔界編」発売に合わせて行われた、幽助役・佐々木望さんと阿部記之監督の対談(コミックナタリー)からです。
幽☆遊☆白書のアニメを作った人たちが語ったこと
この作品のアニメは、1992年から1995年までフジテレビ系列で放送されました。監督の阿部記之さんにとっては監督デビュー作、佐々木望さんにとっては代表作となった作品です。
2018年、25周年のBlu-ray BOX発売に合わせて2人の対談が実現しました。制作当時の判断がかなり具体的に語られています。
「一番いいところを早くやろう」
阿部監督はこの作品に関わるまで原作を読んでいませんでした。「話をいただいて最初の2巻くらいを読んでみて、聞いていたよりかわいらしい話なのかなと思ったりもしました」。
そのうえで、放送の構成についてこう説明します。
「当時アニメを作るときって、当たるかわからないから一番いいところを早くやろうっていう話が出たりしていたんですよ。だから「幽☆遊☆白書」でも序盤のエピソードは割と短くして、蔵馬と飛影を最初のほうから登場させたんです」
佐々木さんも「マンガでは3巻まで登場しない蔵馬と飛影が、アニメでは6話から出てきましたもんね」と受けています。
監督は「でも序盤の話もとってもいい話だったから、ホントはやりたいなとは思っていました」とも。アニメから入った人が原作の序盤で驚くのは、当時の編成判断の結果です。作品の出来とは関係ありません。
アニメ終盤に原作にない戦いがある理由
TVアニメの終盤、「魔界編」では原作にない蔵馬と時雨、幽助と黄泉の戦いが描かれます。これも当時の事情によるものでした。
「「このままずっと戦っていくということもあり得るかもしれない」と思って、原作にはない蔵馬と時雨や幽助と黄泉の戦いを盛り込みました」
前段で監督はこう説明しています。「当時『幽☆遊☆白書』の連載がそろそろ終わるかもという話を我々も聞いていたんです。でもアニメをどうするかはまだ決まっていなくて。変な話をすれば、『アニメを続けます』と言われたら仕事なので監督としては何かを出さなきゃいけないんです」。
そして「結果的にはプロデューサーの判断で、マンガと同じように終わろうという話になった」。アニメを引き延ばす可能性に備えて用意された戦いが、そのまま残った——というのが実際のところでした。
幽助役は「原作を読まないようにしていた」
佐々木望さんも原作を読んでいませんでした。しかも、役が決まったあとも意図的に読まなかったといいます。
「自分は幽助という人間をこれから演じるわけで、その自分、つまり幽助が、先の出来事をあらかじめ知っているというのはどうなんだろうと当時は考えていました。幽助自身はこの先自分がどうなるかということを知らないで生きているわけですから」
当時のアニメは台本が当日までもらえなかったそうです。「現場に行って机に積まれている台本を読んで、『あっ、今日は幽助がこんなにしゃべってる』『今日はあまりしゃべらないな』って初めて知るんです」。
だから毎週のアフレコが「今日はこれで終わるのか。ここで終わっちゃったら来週どうなるんだ?」と楽しみだったと語り、「アフレコ台本を通して自分も『幽☆遊☆白書』の読者だったんでしょうね」と振り返っています。
「1人ひとりが個として存在していて、それぞれに目的が違う」
2018年に新作アニメのアフレコをして、佐々木さんが改めて気づいたという原作の構造です。
「「幽☆遊☆白書」って「このキャラを立たせるために別のキャラを存在させる」という作りじゃないんですよね。1人ひとりが個として存在していて、それぞれに目的が違う」
「もちろんそれぞれが手を組むことはあるんですけど、仲間になったからといって個は失わずに、1人ひとりが立っているんです」。
阿部監督も「冨樫先生はキャラクターのちょっとした仕草とか、ふとしたひと言で登場人物の関係性を浮き立たせていますよね」と応じています。外伝「TWO SHOTS」については「蔵馬と飛影がなぜその後ずっと仲間になるかということは描かれていないんですけど、自分の力を落として仮の状態にいる似た境遇の2人が出会ったがゆえに、その後も一緒にいることになるっていうのを原作の少ないページの中で気付かされた」とも述べました。
「暴れてやろう」と思っていた若いスタッフ
阿部監督は当時、演出の仕事を始めて3、4年目の若手でした。「各話演出で入りたいな」とプロデューサーに話しに行ったら「じゃあ監督で」と言われたといいます。
印象に残っているのは暗黒武術会編のアクション描写。その理由がスタッフの年齢構成にありました。
「よくスタッフの間では「TVアニメのシリーズでできる限りのことをやりたい」「『どうせTVアニメでしょ』って言われないようなものを作りたい」って言っていたんです」
セル画の枚数についても明かしています。「ぴえろはそこが緩いというか甘い会社だったんです。一応規定はあるんですが使ったもん勝ちみたいなところがあって。それで何回も怒られたり」。
同世代には同い年の新房昭之さん、少し下の西尾鉄也さんがいて、「彼がこういう作画してきたから自分はそこをこうやってやる」というスパイラルができていたそうです。「いつも会社に来たらみんなで喫茶店に行ってお茶を飲む。そこで『幽☆遊☆白書』も含めたいろいろな話をして、それから仕事するみたいなことをやっていました。この作品以降、そういうことができる環境がなかなかないんですけど」。
幽☆遊☆白書の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | 幽☆遊☆白書(通称「幽白」) |
| 作者 | 冨樫義博 |
| 掲載誌 | 週刊少年ジャンプ(集英社) |
| 連載期間 | 1990年51号〜1994年32号。全175話+外伝1話 |
| 巻数 | 全19巻(ジャンプ・コミックス) |
| 話数カウント | ジャンプコミックス以外では「act.-」 |
| 受賞 | 1993年 第39回小学館漫画賞 |
| 累計部数 | 5000万部突破(2020年12月時点) |
| TVアニメ | 1992年〜1995年、フジテレビ系列で全112話。制作はぴえろ、監督は阿部記之(監督デビュー作) |
| 主なキャスト | 浦飯幽助役:佐々木望/桑原和真役:千葉繁/蔵馬役:緒方恵美/飛影役:檜山修之 |
| 完全版 | 全15巻。2004年8月から2005年3月にかけて毎月2冊ずつ(最終月のみ1冊)刊行 |
| 文庫版 | 集英社文庫から全12巻。2010年11月より毎月1巻ずつ刊行 |
| 舞台化 | 2019年5月9日に発表 |
| 実写化 | Netflixで2023年12月に世界190か国へ配信。公開3日目で世界ランキング2位 |
全19巻は5つの編に分かれる
この作品は編が進むごとに性格が変わります。学園ものから霊界探偵もの、そしてトーナメントバトルへ。区切りを知っておくと通して読みやすくなります。
話数の区切りは作品情報として確認できます。どこで作風が変わるかの目安になります。
| 編 | 話数 | 内容 |
|---|---|---|
| 霊界死闘編 | act.1〜17 | 浦飯幽助が交通事故で死ぬところから始まる。生き返るための試練を受け、霊体としていくつかの事件を解決する |
| 霊界探偵編 | act.18〜51 | 生き返った幽助が霊界探偵として働きはじめる。桑原和真、蔵馬、飛影と組むことになる |
| 暗黒武術会編(戸愚呂兄弟編) | act.52〜112 | 妖怪たちの死闘「暗黒武術会」。拒否権はなく、生き残るには勝つしかない |
| 魔界の扉編(仙水編) | act.113〜153 | 蟲寄市近辺で起きる異変と、仙水との対決 |
| 魔界編 | act.154〜最終話 | 魔界を舞台にした最終章 |
原作では蔵馬と飛影は3巻まで登場しません。アニメでは6話から出ています。アニメから入った人が原作を読むときは、ここを踏まえておくと戸惑いません。
なお登場人物の人気については、蔵馬と飛影が女性読者から高い支持を得たことが知られています。作者本人も「(二人が)今の主人公です」と茶化したことがあると記録されています。
作者が語った連載終了の経緯
この作品の終わり方については、作者の冨樫義博さん自身がかなり踏み込んだ説明を残しています。
以下はWikipedia「幽☆遊☆白書」に記載されている作者の発言です。一次資料にあたって確認したものではないため、参考情報として扱ってください。
| 項目 | 記録されている内容 |
|---|---|
| 連載終了の理由 | 「かねてからの自身の持病悪化、これ以上、出版社(集英社)に無理やり従って連載を続けても、同じことを、読者が飽きるまで繰り返すだけになるために、半ば私のわがままで止めた」 |
| 決意の時期 | 143話(残り32話)の掲載時点で連載終了は決定済み。原稿が1話完成するたびにカレンダーに×をつけるほどだった |
| 外伝「TWO SHOTS」 | 編集部から無理やり描かされたもので、原稿は下描きなしの一発勝負。あまりの腹立たしさにアシスタントも雇わなかったという |
| タイトルの由来 | 連載会議時は「ユーレイ入門(仮)」。『西遊記』をもじった『幽☆遊☆記』を提案したが、同時期連載の『珍遊記』とかぶり再考。『幽☆遊☆』の次に最初に思いついたのが『白書』だった |
| 完全版への反応 | 全15巻の完全版刊行は「全く予想していなかった」。最終19巻の表紙が連載時最後の仕事で、「もうこいつら(幽助、桑原、蔵馬、飛影)に色塗ることもないだろう」と思いながら描き下ろしていたという |
| 連載終了後 | 同人漫画『12人のおびえる者たち』で、本編が役者による劇中劇だったと描いた。その後『レベルE』を週刊少年ジャンプで連載 |
原稿が1話仕上がるたびにカレンダーに×をつけていた——この一点だけで、終盤の展開の速さがどこから来たのかが見えてきます。
外伝「TWO SHOTS」は、のちにアニメの新作エピソードとして映像化されました。編集部に無理やり描かされ、下描きなしで仕上げたという作品が、25年後に「当時から人気があったエピソード」として選ばれています。
まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)
ここから先は、作り手の発言では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
終盤の展開の速さをどう受け取るか
魔界編の決着の付け方は、いまも議論の対象です。作者は連載終了の理由を語っていますが、個々の展開について説明した一次情報には、本記事の調査範囲でたどり着けませんでした。
手がかりになるのは「同じことを、読者が飽きるまで繰り返すだけになる」という言い方です。トーナメントを重ねる構造そのものへの疑問が先にあった、と筆者は読んでいます。だとすれば最後に選ばれた決着の付け方は、失速ではなく拒否だったことになります。ただしこれは解釈です。
アニメと原作、どちらから入るべきか
アニメは序盤を圧縮し、終盤に原作にない戦いを足しています。原作は蔵馬と飛影の登場が遅く、終盤は速い。どちらも「そのままの形」ではありません。
筆者は原作を先にをすすめます。全19巻と短く、アニメの改変がどこなのかが分かるからです。ただしアニメの暗黒武術会編の作画は当時の若いスタッフが「暴れてやろう」と作ったもので、そこだけを目当てに見る価値があります。これは好みの問題でもあります。
この作品が30年読まれ続ける理由
2023年のNetflix実写シリーズは世界190か国に配信され、公開3日目で世界ランキング2位になりました。連載終了から30年近く経っての数字です。
佐々木さんが語った「1人ひとりが個として存在していて、それぞれに目的が違う」という構造が、いちばん近い説明かもしれません。主人公を立たせるための脇役がいない作りは、どのキャラクターから入っても物語が成立するということでもあります。ただしこれは筆者の読みです。
どこで読める?
紙のコミックスはジャンプ・コミックス(集英社)から全19巻が刊行されています。完全版は全15巻、集英社文庫版は全12巻。巻数が違うので購入時に版を確認してください。
電子版は集英社の「ゼブラック」をはじめ主要な電子書店で配信されています。
TVアニメと劇場版、そしてNetflixの実写シリーズは各配信サービスで視聴できます。配信先は時期によって変わるため、視聴前に最新の状況を確認してください。
よくある質問
アニメと原作で蔵馬と飛影の登場時期が違うのはなぜ?
阿部記之監督が「当たるかわからないから一番いいところを早くやろう」という当時の考え方だったと説明しています。原作では3巻まで登場しませんが、アニメでは6話から出ています。
アニメ終盤に原作にない戦いがあるのはなぜ?
原作の連載が終わりそうだという話は制作側も聞いていたものの、アニメを続けるかは決まっていませんでした。続く可能性に備えて蔵馬と時雨、幽助と黄泉の戦いを盛り込んだと監督が明かしています。
作者はなぜ連載を終わらせた?
冨樫義博さんは「かねてからの自身の持病悪化、これ以上、出版社に無理やり従って連載を続けても、同じことを、読者が飽きるまで繰り返すだけになるために、半ば私のわがままで止めた」と述べています。
外伝「TWO SHOTS」はどういう経緯で描かれた?
編集部から無理やり描かされたもので、原稿は下描きなしの一発勝負、あまりの腹立たしさにアシスタントも雇わなかったと記録されています。2018年には新作アニメとして映像化されました。
全19巻はどう区切られている?
霊界死闘編(act.1〜17)、霊界探偵編(act.18〜51)、暗黒武術会編(act.52〜112)、魔界の扉編=仙水編(act.113〜153)、魔界編(act.154〜最終話)の5つです。
タイトルの由来は?
連載会議時は「ユーレイ入門(仮)」でした。『西遊記』をもじった『幽☆遊☆記』を提案したものの、同時期連載の『珍遊記』とかぶって再考。『幽☆遊☆』の次に最初に思いついた言葉が『白書』だったとされています。
まとめ
『幽☆遊☆白書』のアニメと原作の差は、当時の事情から説明がつきます。阿部記之監督は序盤を圧縮した理由を「当たるかわからないから一番いいところを早くやろう」と説明し、終盤に原作にない戦いを足したのは「アニメを続けます」と言われる可能性に備えてのことでした。幽助役の佐々木望さんは役が決まったあとも原作を読まず、「幽助自身はこの先自分がどうなるかということを知らないで生きているわけですから」と理由を語っています。そして作者の冨樫義博さんは連載終了について「半ば私のわがままで止めた」と述べ、143話の時点で決意は固まっていて、原稿が1話仕上がるたびにカレンダーに×をつけていたと記録されています。この作品の速さも遅さも、偶然ではありませんでした。
あわせて読みたい
- 幽☆遊☆白書 読む順番ガイド|全19巻の編と巻数、アニメ・劇場版・実写の見る順番
- HUNTER×HUNTER 何巻まで出てる?既刊39巻と編ごとの巻数、休載の実際
- カウボーイビバップ 見る順|地上波は26話中12話だけだった、という前提から
- ジョジョの奇妙な冒険 考察|「世代交代」も「時間のラスボス」も、作者が答えを出していた
出典
- コミックナタリー アニメ「幽☆遊☆白書」特集 幽助役・佐々木望×阿部記之監督対談(2018年)
- 同 2ページ目(序盤の圧縮・原作を読まなかった理由・暗黒武術会編の作画)
- 同 3ページ目(原作にない戦いを足した理由・キャラクターの作り)
- Wikipedia「幽☆遊☆白書」(連載データ・編の区切り・連載終了の経緯・タイトルの由来・書誌情報)
出典を示したうえで、必要な範囲だけを引用しています。本記事に画像は掲載していません。©冨樫義博/集英社
📣 この記事どうでした?ワンタップで教えてください
