OZXLOG好きの、その先へ。
v0.7.34

甲鉄城のカバネリ 考察|なぜゾンビなのか、監督が理由を語っていた

甲鉄城のカバネリ アイキャッチ

※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。

『甲鉄城のカバネリ』の「甲鉄城のカバネリ 考察」でよく語られるのが、「なぜ和風スチームパンクにゾンビを組み合わせたのか」という問いです。この設定の奇抜さは作品の顔になっていますが、荒木哲郎監督はまったく実務的な理由を語っています。ヒロインを嫌われないようにするため、というのです。この記事では、総集編の公開に合わせて行われた荒木監督と音楽担当・澤野弘之さんの対談から、作品の設計意図を整理します。

📘 この記事でわかること

  • 「なぜゾンビなのか」に対する監督自身の答え
  • 企画の出発点が、制作スタジオの得意分野だったこと
  • 1980年代のアニメを意識して作られていること
  • 音楽に「和に寄り添い過ぎず、ご自由に」と発注した理由
  • アニメ・コミカライズ・総集編・続編の関係

📈 数字で見る甲鉄城のカバネリ

全12話
2016年4月7日〜6月30日・フジテレビ ノイタミナ枠
コミカライズ全4巻
月刊コミックガーデン 2016年5月〜2018年11月
総集編2部作
2016年12月31日・2017年1月7日公開
オリジナル作品
原作漫画・小説を持たないアニメ企画

甲鉄城のカバネリの設定を読み解く3つの鍵

🔑 監督の発言から分かること

  1. ゾンビにしたのはヒロインのため。「ヒロインが誰かを殺しちゃっても、彼女が嫌われないようにするには」を考えた結果だと監督が語っています。
  2. 企画の出発点はスタジオの得意分野。WIT STUDIOのアニメーターが活きるアクションものを作る、というのが最初のテーマでした。
  3. 1980年代っぽさは意図的。富野由悠季監督の『機動戦士ガンダム』の影響を認めたうえで、昔のアニメを現代の技法で磨き直すことをテーマに掲げています。

以下、鍵かっこ内は出典元での発言をそのまま引いたものです。リンク先で全文を確認できます。

甲鉄城のカバネリの荒木哲郎監督が語ったこと

以下は、総集編の劇場公開に合わせてコミックナタリーが行った荒木哲郎監督と音楽担当・澤野弘之さんの対談(2016年)からの引用です。オリジナル作品なので、設定の理由を語れるのは制作陣だけ。その意味で貴重な一次情報です。

ゾンビにしたのは、ヒロインを嫌われないようにするためだった

和風スチームパンクにゾンビという組み合わせについて聞かれたときの答えです。世界観の発想としてではなく、キャラクターを成立させるための逆算でした。

「ヒロインが誰かを殺しちゃっても、彼女が嫌われないようにするにはどうすればいいか……それを考えていてゾンビになりました」
— 荒木哲郎(出典:コミックナタリー 荒木哲郎×澤野弘之 対談)

監督は続けて「ゾンビなら人間と比べて、殺しても嫌悪感を抱かれないだろうと。ほかにもいろいろと理由はありますが、一番大きいのはそこです」と説明しています。

つまりカバネという敵は、世界観を面白くするために生まれたのではなく、無名というヒロインが大量に敵を倒しても好かれるための装置として設計されたということです。

「ゾンビ×蒸気機関という異色の組み合わせ」と紹介されることの多い作品ですが、監督の説明を踏まえると、順番は逆でした。キャラクターが先にあって、そのために世界のルールが決められたのです。

企画の出発点は、スタジオのアニメーターが活きる題材だった

「WIT STUDIOのアニメーターが一番得意なのがアクションもので、彼らが活きるものを作るというのが最初のテーマでした」
— 荒木哲郎(出典:コミックナタリー 荒木哲郎×澤野弘之 対談)

監督はさらに「この多数のアニメが存在するシーンにおいていかにして目立つか。少なくとも同クールに似たような作品が存在しないことを目標に企画をスタートさせました」と語っています。

「誰が作るか」から逆算して題材が決まったという説明です。オリジナル作品の企画がどう立ち上がるかを示す例としても分かりやすいと思います。

狭い蒸気機関車のなかでの戦闘、駅という閉じた舞台——アクションを見せるための舞台装置が揃っているのは、この出発点によるものだと考えられます。

1980年代っぽさは、意図して出している

澤野さんが「今流行っているアニメというよりは、当時やもう少し前のアニメを思い出す雰囲気でよかった」と述べたのに対する答えです。

「あえて1980年代っぽさを出しています。自分が好きだった富野(由悠季)監督の「機動戦士ガンダム」の影響なのは間違いない」
— 荒木哲郎(出典:コミックナタリー 荒木哲郎×澤野弘之 対談)

監督は「昔のオーソドックスなアニメを、現代の技法でブラッシュアップして見せるというのもテーマのひとつ」とも語っています。登場人物に中高生だけでなく子どもも大人もいるという構成も、その一環だそうです。

また『もののけ姫』の影響についても認めていて、「昔そのものを描くということではなく、今のアニメとして自然だったりカッコよかったりするように微妙にアレンジしてるんです。たとえばキャラクターの髪型は、今のアニメに登場させるとしたらありかどうかで判断しました」と具体的に説明しています。

懐かしさと現代性のバランスが、意図して調整されていたということです。

音楽への発注は「和に寄り添い過ぎず、ご自由に」

「自由に作った劇伴で作品の幅を広げてほしいんです」
— 荒木哲郎(出典:コミックナタリー 荒木哲郎×澤野弘之 対談)

和風の世界観でありながら、音楽に和を求めなかった理由です。監督は「上がってきた曲を聴いて、『これ、すごいな!』『この曲、どうやって使えばいいんだろう』ってなり、こちらも燃える」と語っています。

澤野さん側も「もし『和にこだわってください』と言われると、音楽アプローチの幅が狭まり、似たり寄ったりの曲ばかりになる可能性もあります」と応じていて、両者の考えが一致していたことが分かります。

メインテーマ「KABANERI OF THE IRON FORTRESS」については、監督が「戦いに勝つシーンがすべてあの曲なんですよ。あの曲の前奏が流れただけでもう勝つんだなってわかる」と説明しています。曲の使いどころが固定されていたわけです。

作品の基本情報

項目内容
作品名甲鉄城のカバネリ
形態オリジナルTVアニメ(原作となる漫画・小説はない)
放送2016年4月7日〜6月30日・全12話/フジテレビ ノイタミナ枠
監督荒木哲郎
シリーズ構成・脚本大河内一楼(脚本は瀬古浩司も参加)
キャラクター原案美樹本晴彦
音楽澤野弘之
アニメーション制作WIT STUDIO
コミカライズ月刊コミックガーデン 2016年5月2日〜2018年11月5日・全4巻(作画:吉田史朗)
総集編前編「集う光」2016年12月31日/後編「燃える命」2017年1月7日

アニメ・コミカライズ・総集編の関係

この作品はオリジナルアニメが出発点で、コミカライズはあとから始まっています。順番を整理しておきます。

✅ 作品・公式で確認できること
以下は放送・刊行の記録で確認できる内容です。
時期内容
2016年4月7日〜6月30日TVアニメ全12話をフジテレビ ノイタミナ枠で放送
2016年5月2日〜2018年11月5日コミカライズを月刊コミックガーデンで連載(全4巻・作画は吉田史朗)
2016年12月31日総集編 前編「集う光」公開
2017年1月7日総集編 後編「燃える命」公開
2019年続編『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』

総集編について監督は「初めて観た人もきちんと話がわかること、元の作品を観た人と同じくらい感動できること」を目標にしたと語り、さらに「ちゃんと短くまとめるということも気にしています。俺はアニメの映画が長いと疲れると思っているので」と付け加えています。

先にアニメを見るか、コミカライズから入るかで迷う場合は、オリジナルアニメが本体なのでTVシリーズ全12話からが順当です。

総集編で監督がこだわった音響

総集編は5.1chでの上映でした。監督はこれを「技がひとつ増える感覚」と表現しています。

🗣 作者・制作陣が語ったこと
以下は対談で語られた制作の裏側です。
項目監督・音楽担当の説明
5.1chの利点「テレビシリーズだとスピーカーが2つしかないから音が増やせない」場面でも、後ろのスピーカーで音を足せる
音響への発注印象的なシーンでは「映画館のスピーカーを壊すつもりで」とオーダーしたという
澤野弘之の見方低音がよく出るぶん迫力が増し、テレビでは聴こえない音の構成も伝わる
監督がこだわる点「絵と曲をいかに合わせるか」。シーンと曲の感情のチューニングが合ったときに「快楽が何倍にもなる」

監督は6話ラストの戦闘シーンについて「あの回は本当にうまくいきましたね。あんなに気持ちいいフィルムって、この世にどれだけあるのかなって自分でも思うくらい」とも述べています。

まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)

❓ まだ分かっていないこと(以下は推測です)
ここから先は、制作陣の発言では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
「甲鉄城のカバネリ」PV第一弾_2015.12.17解禁(【フジテレビ】アニメ公式チャンネル)

「駿城」や「駅」という設定の由来

蒸気機関車を駿城(はやじろ)と呼び、砦を駅と呼ぶ——この作品独自の用語について、制作陣が由来を語った一次情報は、本記事の調査範囲では見つけられませんでした。

監督が語った「アクションが活きる舞台」という方針を踏まえると、走る密室という構造がアクション向きだったという説明は成り立ちます。ただしこれは筆者の推測です。

コミカライズとアニメの違い

コミカライズは全4巻で、アニメの放送とほぼ並行して連載されました。両者の差異について制作側がまとめて語った資料は確認できていません。

オリジナルアニメのコミカライズという性格上、アニメが本体であることは確かですが、どこがどう違うかは実際に読み比べる必要があります。

どこで読める?

アニメは各配信サービスで視聴できます。総集編と続編も映像商品が出ています。

コミカライズは月刊コミックガーデン(マッグガーデン)で連載され、全4巻が発売されています。

よくある質問

甲鉄城のカバネリはなぜゾンビ設定なの?

荒木哲郎監督は「ヒロインが誰かを殺しちゃっても、彼女が嫌われないようにするにはどうすればいいか……それを考えていてゾンビになりました」と語っています。世界観の発想ではなく、キャラクターからの逆算でした。

原作はある?

ありません。オリジナルTVアニメです。コミカライズは放送とほぼ同時期に始まり、全4巻で完結しています。

1980年代のアニメっぽいのは気のせい?

気のせいではありません。監督が「あえて1980年代っぽさを出しています」と語っており、富野由悠季監督『機動戦士ガンダム』の影響も認めています。

音楽が和風でないのはなぜ?

監督が澤野弘之さんに「和に寄り添い過ぎず、ご自由に」と発注したためです。自由に作った劇伴で作品の幅を広げてほしかった、と説明されています。

どの順番で見ればいい?

オリジナルアニメが本体なので、TVシリーズ全12話 → 総集編(前編・後編)→ 続編『海門決戦』の順です。コミカライズは補足として読めます。

制作スタジオは?

WIT STUDIOです。監督は「WIT STUDIOのアニメーターが一番得意なのがアクションもので、彼らが活きるものを作る」ことが最初のテーマだったと語っています。

まとめ

『甲鉄城のカバネリ』の「なぜゾンビなのか」には、荒木哲郎監督の明確な答えがあります。ヒロインが敵を倒しても嫌われないようにするため——世界観の発想ではなく、キャラクターからの逆算でした。企画の出発点もWIT STUDIOのアニメーターが活きるアクションものを作ることで、1980年代のアニメを現代の技法で磨き直すというテーマも意図的なものです。音楽に「和に寄り添い過ぎず、ご自由に」と発注したのも、作品の幅を広げるための判断でした。

あわせて読みたい

出典

出典を示したうえで、必要な範囲だけを引用しています。本記事に画像は掲載していません。©カバネリ製作委員会

📣 この記事どうでした?ワンタップで教えてください

🔥 今週よく読まれた記事

読み込み中…