※本記事は、公式サイト・出版社・ニュースサイトで公開されている情報をもとにまとめています。推測にあたる部分は、その旨を書いています。
『ブルーピリオド』を読んでいて「この作品、恋愛がほとんど出てこないな」と感じた人は多いはずです。美大受験と藝大生活という、恋愛が絡んでもおかしくない舞台なのに。作者の山口つばささん自身が、その理由を対談で語っています。しかも「入れないほうがいい」という判断ではなく、もっと個人的な事情でした。この記事では、山口さんが『BEASTARS』の板垣巴留さんと交わした対談から作品の設計を読み解き、あわせて既刊19巻で八虎がどこまで進んだのかを話数の区切りで整理します。
📘 この記事でわかること
- 恋愛をほとんど描いていない理由についての作者自身の説明
- 同業者(板垣巴留)から見た「変にラブコメに走らないところがすごい」という評価
- アニメで加えられた原作にない演出を、作者がどう受け止めたか
- 既刊19巻で八虎が高校2年から藝大3年まで進んでいること
- 受賞歴・累計部数・映像化などの確認できるデータ
- 作者が語っていないことと、読者の解釈の境目
📈 数字で見るブルーピリオド
ブルーピリオドを読み解く3つの鍵
🔑 作者の言葉から分かること
- 恋愛が描かれないのは作者の「陰の部分」による。山口さんは「いつか『ブルーピリオド』でも、恋愛の話を描かなきゃなとは思っている」と前置きしたうえで、自身の過去の感じ方がそうさせていると説明しています。
- 同業者はそこを長所として見ている。『BEASTARS』の板垣巴留さんは「変にラブコメに走らないところがすごい」と評し、この作品を「八虎と美術の関わり合いを軸とした1本のドキュメンタリー」と読んでいます。
- 19巻時点で八虎は藝大3年生。高校2年から始まった物語は、予備校・受験・藝大1年・2年を経てここまで来ました。話数ごとに学年が明示されているので、どこを読んでいるのか迷いません。
以下の引用は、TVアニメ放送時にコミックナタリーが実施した山口つばさ×板垣巴留の対談からです。どちらも美術系の大学を出た漫画家という共通点があります。
ブルーピリオドの作者が語ったこと
山口つばささんは東京藝術大学の絵画科出身、板垣巴留さんは武蔵野美術大学の映像学科出身。TVアニメ『ブルーピリオド』の放送を機に、コミックナタリーがこの2人の対談を組みました。
作品の話に加えて、互いの作品をどう読んでいるかまで踏み込んだ内容になっています。以下はそこからの引用です。
恋愛を描いてこなかった理由
対談で板垣さんは、自分の描き方との違いとして『ブルーピリオド』に恋愛がないことを挙げました。「キャラクターの性的な部分……例えば自慰をするのかとか生理があるのかとか、そういった部分を頭の片隅に置いて描くか描かないかで、作品に大きな違いが生まれると思う」と語り、自身は「生き物の体の仕組みとして、全部描かないとダメなタイプ」だと説明しています。
それを受けた山口さんの答えが、かなり率直でした。
「いつか「ブルーピリオド」でも、恋愛の話を描かなきゃなとは思っているんですけど、私の陰の部分が強く作用しているのは間違いなくあって」
続けて山口さんはこう説明しています。「今は平気ですけど、昔は少年マンガに恋愛やセックスの話が出てくると、大人にならないでほしいと思ってしまうタイプだった」。
つまりこれは作劇上の計算ではなく、作者自身の読者としての感覚に由来するということです。『弱虫ペダル』の渡辺航さんが「レースの動機が二つに割れるから」という理由で恋愛を避けたのとは、出発点が違います。
そして山口さんは板垣さんの姿勢を「絶対、そのほうがいいですよ」と肯定し、『BEASTARS』について「最初から性や恋愛に向き合っているじゃないですか。事実として、真っ向から全部捉えている。そこがまた魅力ですよね」と述べています。
同業者は「ドキュメンタリー」として読んでいた
板垣さんは『ブルーピリオド』をどう読んでいたのか。アニメ化に対して一瞬不安を覚えたと語る文脈で、原作の読み方が示されます。
「この作品は主人公の八虎と美術の関わり合いを軸とした1本のドキュメンタリーだと思ったんですね」
理由は「大きな出来事も小さな出来事も、全部八虎の内側を通して描かれているじゃないですか」。現実世界に生きる1人の男の子の物語として追っていたから、アニメになったときにどう受け止めればいいのか分からなくなった、という話です。
板垣さんは、自分の変化についても語っています。「私、学生時代は受験やテストになりふり構わずがんばっている人が嫌いだったんですよ」。それが八虎の藝大2次試験の場面で「完全に気持ちが憑依してしまって。初めて努力家を好きになりました」。
アニメが原作に足した演出を、作者はこう見た
アニメ第1話には、原作にない描写が加えられています。八虎が青く塗った渋谷の絵を描いたあと、教室で手を見つめる場面です。
「絵の具の汚れが手に残ったままで描かれているんですね。原作とは異なるのですが、作品の意図を理解してくださった演出で、すごくいいなと思いました」
原作にない要素でも、意図が合っていれば歓迎する。この姿勢はアニメへの関わり方にも出ています。山口さんは毎週アフレコ現場に通い、音響監督や監督にキャラクターのニュアンスを伝え、作中に登場する友人の作品を実際に回収して貸し出したそうです。「原作者という立場にしては、けっこう関わったほうなんじゃないかと思います」。
アニメ化そのものについても「いろんな方の解釈が加わることで、このキャラクターってこういう性格だったんだと、自分が生み出したキャラクターの解像度が上がりました」と語っています。作者にとっても発見があった、ということです。
「どんなにムカつくことがあっても、マンガのネタに」
漫画家になってよかったことを問われたときの答えです。この作品の登場人物が抱える屈託の出どころが、少し見える気がします。
「どんなにムカつくことがあっても、マンガのネタにしてやると思える点ですかね」
行き詰まったときの対処も具体的です。「何が問題で何を解決すればいいのかわからないときは、友達に聞いちゃいますね。人の考察をたくさん聞いて自分の中でジャッジすることで、考えがまとまったりする」。
ネームが通らなかった時期には、試し読みの最初の3ページだけをひたすら読んでいたとも語っています。「マンガは最初の3ページが掴みとして大事って言われるんですけど、どうやって掴んでいるんだろう」と。八虎が課題に対して調べ、試し、言語化していくあの手つきは、作者自身のやり方と地続きに見えます。
ブルーピリオドの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | ブルーピリオド(Blue Period.) |
| 作者 | 山口つばさ |
| 掲載誌 | 月刊アフタヌーン(講談社) |
| 連載開始 | 2017年8月号 |
| 巻数 | 既刊19巻(2026年5月22日時点)。1巻は2017年12月22日発売 |
| 累計部数 | 全世界シリーズ累計1170万部(2025年9月時点) |
| 受賞 | みんなが喜ぶTSUTAYAコミック大賞2018 ネクストブレイク部門/マンガ大賞2019 3位/マンガ大賞2020 大賞/第44回講談社漫画賞 |
| TVアニメ | 2021年10月放送開始。MBS・TBS系全国28局ネット「スーパーアニメイズム」枠。Netflixで国内先行独占配信 |
| アニメのスタッフ | 総監督:舛成孝二/監督:浅野勝也/シリーズ構成・脚本:吉田玲子/音響監督:菊田浩巳/制作:Seven Arcs |
| 舞台 | 2022年3月上演 |
| 実写映画 | 2024年8月公開 |
| 八虎役 | アニメ:峯田大夢/舞台:岡宮来夢/実写映画:眞栄田郷敦 |
| 作者の経歴 | 2014年「熱の夢」でアフタヌーン四季賞 秋のコンテスト佳作。2015年、増刊good!アフタヌーン2015年5号の読み切り『ヌードモデル』でデビュー。2016年、新海誠原作『彼女と彼女の猫』のコミカライズで初連載(講談社 著者紹介) |
19巻で八虎はどこまで進んだのか
この作品は話数を「筆目」と数えます。主人公の学年が話数で区切られているので、全体のどこにいるかが分かりやすくなっています。
話数ごとの学年は作品情報として明示されています。「いま自分はどのあたりを読んでいるのか」を確かめる目安になります。
| 話数 | 八虎の学年 | この時期に起きること |
|---|---|---|
| 1筆目〜5筆目 | 高校2年生 | 美術室で1枚の絵に惹かれ、美術部に入部。絵を描く楽しさに目覚める |
| 6筆目〜25筆目 | 高校3年生 | 美術予備校(東京美術学院)へ。受験を意識した技術を学び、東京藝術大学を目指す |
| 26筆目〜47筆目 | 藝大1年生 | 現役合格したものの、周囲のレベルに圧倒される。受験絵画は作品ではないと否定され、目標を見失う |
| 48筆目〜78筆目 | 藝大2年生 | 作家を志す方向へ。経済的な問題を抱えつつ、両親の理解も得ていく |
| 79筆目〜 | 藝大3年生 | 既刊19巻はこの範囲に入る |
つまり「美大受験の話」は物語の前半までで、そこから先は藝大生としての話に移っています。受験漫画として読み始めた人が「26筆目あたりから別の話になった」と感じるのは、構造としてそのとおりです。
初めて読むなら、まず藝大合格までを一区切りにするのが現実的です。そこまでで一本の物語として閉じています。
ブルーピリオドが受けてきた評価
この作品は連載開始の翌年から評価を集めています。
受賞と部数は公表されている数字です。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2017年8月号 | 月刊アフタヌーン(講談社)で連載開始 |
| 2017年12月22日 | 単行本1巻発売 |
| 2018年 | みんなが喜ぶTSUTAYAコミック大賞2018 ネクストブレイク部門を受賞 |
| 2019年 | マンガ大賞2019で3位。「このマンガがすごい!2019」オトコ編で4位 |
| 2020年 | マンガ大賞2020で大賞。第44回講談社漫画賞も受賞 |
| 2021年10月 | TVアニメ放送開始。Netflixで国内先行独占配信 |
| 2022年3月 | 舞台版を上演 |
| 2024年8月 | 実写映画版を公開 |
| 2025年9月 | 全世界シリーズ累計部数1170万部を突破 |
| 2026年5月22日 | 単行本19巻を発売 |
作者の山口つばささんは、マンガ大賞2020の授賞式にカエルの被り物で登壇したことでも知られています。翌年の授賞式では、前年の反響について「中学のときの保健室の先生から『マンガ大賞(の受賞)おめでとう』というお手紙をいただくくらい、遠くまで届く賞なんだと思いました」と語りました。
まだ分かっていないこと(ここから先は推測です)
ここから先は、作者の発言では確認できていない内容です。筆者の読み取りとしてお読みください。
この先、恋愛は描かれるのか
作者は「いつか描かなきゃなとは思っている」と述べています。ただし時期も形も示されていません。
手がかりになるのは「今は平気ですけど、昔は……」という言い方です。作者の側の条件はすでに変わっていると読めます。とはいえ、それが作品に反映されるかどうかは別の話です。ここは待つしかありません。
物語の終着点はどこか
受験編が終わり、藝大での学生生活も3年目に入りました。卒業まで描くのか、その先の作家としての道まで行くのかは示されていません。
作者が語った範囲で確実なのは、八虎が「作家を志す」方向へ進んだことです。「美大に受かる」がゴールではなかったという構造が19巻までではっきりしています。そこから先の見通しは、筆者にも分かりません。
この作品はなぜ美術に詳しくない人にも届くのか
作者がこの点について整理して語った一次情報には、本記事の調査範囲でたどり着けませんでした。
板垣さんの「八虎の内側を通して描かれている」という読みが、いちばん近い説明かもしれません。描かれているのが絵の技術ではなく「分からないものに向き合う手つき」だから、美術を知らなくても追える——というのが筆者の読みです。ただしこれは解釈です。
どこで読める?
紙のコミックスはアフタヌーンKC(講談社)から既刊19巻が刊行されています。特装版(ミニ画集小冊子付き、塗り絵小冊子付き、実写映画化記念)も出ているので、購入時に版を確認してください。
電子版は主要な電子書店で配信されています。連載は月刊アフタヌーンで続いています。
TVアニメはNetflixで国内先行独占配信されました。配信先は時期によって変わるため、視聴前に最新の状況を確認してください。
よくある質問
ブルーピリオドに恋愛が出てこないのはなぜ?
作者の山口つばささんが「私の陰の部分が強く作用しているのは間違いなくあって」「昔は少年マンガに恋愛やセックスの話が出てくると、大人にならないでほしいと思ってしまうタイプだった」と説明しています。作劇上の計算ではなく、作者自身の読者としての感覚に由来するものです。
何巻まで出ている?
既刊19巻です(2026年5月22日時点)。1巻は2017年12月22日発売で、連載は月刊アフタヌーンで続いています。
19巻時点で八虎は何年生?
藝大3年生です。1〜5筆目が高校2年、6〜25筆目が高校3年、26〜47筆目が藝大1年、48〜78筆目が藝大2年、79筆目以降が藝大3年という区切りになっています。
受験の話はどこまで?
藝大合格までがひとつの区切りで、26筆目からは藝大生としての話に移ります。「受験漫画」として読み始めると途中で印象が変わります。
アニメは原作のどこまで?
2021年10月から放送されたTVアニメは物語の前半にあたります。第1話には原作にない演出が加えられており、作者も「作品の意図を理解してくださった演出」と評価しています。
どのくらい評価されている作品?
マンガ大賞2020で大賞、第44回講談社漫画賞を受賞しています。2025年9月時点で全世界シリーズ累計1170万部を突破しました。
まとめ
『ブルーピリオド』に恋愛がほとんど出てこないことには、作者自身の説明があります。山口つばささんは『BEASTARS』の板垣巴留さんとの対談で「いつか描かなきゃなとは思っている」と前置きしたうえで、「私の陰の部分が強く作用している」「昔は少年マンガに恋愛やセックスの話が出てくると、大人にならないでほしいと思ってしまうタイプだった」と語りました。作劇上の計算ではなく、読者としての自分の感覚がそうさせている、ということです。板垣さんはそこを「変にラブコメに走らないところがすごい」と評し、この作品を「八虎と美術の関わり合いを軸とした1本のドキュメンタリー」と読んでいました。既刊19巻で八虎は藝大3年生。美大受験の話はとっくに終わっていて、いまは作家になろうとする人の話になっています。
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出典
- コミックナタリー アニメ「ブルーピリオド」美大卒のマンガ家・山口つばさと板垣巴留が語る
- 同 2ページ目(恋愛の描き方・お互いの作品について)
- コミックナタリー「マンガ大賞受賞『葬送のフリーレン』担当編集が語る思い」(山口つばさの発言を含む授賞式レポート)
- Wikipedia「ブルーピリオド」(連載データ・話数ごとの学年・受賞・累計部数・書誌情報)
出典を示したうえで、必要な範囲だけを引用しています。本記事に画像は掲載していません。©山口つばさ/講談社
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